四ノ宮の撮影には七海がついて行ったという連絡をもらって溜息をつく。

「いや、んなこと言われてもねぇ」
「どうしたの、礫君?」

マネさんが首を傾げる。

「早乙女さんへの愚痴、ですかね」
「それ、聞いちゃっていいのかな…」
「大丈夫です、本人にも言うんで」

車がとあるビルの前に止まる。

「じゃあ、頑張ってね。監督さん」
「頑張ります」
「終わったら連絡して。迎えに来るから」
「はい」

車を見送ってビルに入る。
入ってすぐの所に四ノ宮と七海がいた。

「ずっと手を伸ばせば一つになれるような。一緒に歩みたい、だから守れる力を…」

手に持った紙を見ながら言った七海に首を傾げる。

「これが、四ノ宮さんの本当の気持ちなんです!!」
「四ノ宮の書いた歌詞?」
「はい。…て、御幸君!!?」

驚く七海をスルーして紙に視線を落とす。

「へぇ…随分と変わったね。書き方が」
「お前…」

眼鏡を外している四ノ宮、いや砂月がこちらを見た。

「こんにちは」
「御幸君!!砂月さんを止めてください!!」
「なんで?」

もう一度首を傾げた。

「那月さんの代わりに、仕事に出るって!!けど、那月さんは…自分で頑張るって言ってたんです!!四宮さんは今、変わろうとしているんです!!強くなろうとしてるんです」
「…う〜ん…そう言われても、俺には何もできないよ。ただ…」

視線を砂月に向けた。

「あれ、春歌に那月、礫も何してるんですか?」

変装をしたセシルが入ってきた。
なんでここに…

「セシルさん!!?て、それ眼鏡!!?」
「似合いませんか?変装はアイドルの基本と学んだので」

眼鏡、いやサングラスをセシルが外して微笑む。
そのサングラスを勝手に拝借する。

「別に、砂月が撮影に出ても問題はないよ」
「え?御幸君、何を…」
「けど、本当にそれでいいの?」

じっと、砂月を見つめる。

「どういう意味だ」
「正直に言えば、ちゃんと仕事してくれるなら誰がやっても構わない。ただ、砂月は四ノ宮を守るために生まれたんだろ?」
「そうだ。俺は那月を」
「頑張ろうとしてるのに、それを遮ることは本当に守ることなのか?」

手に持ったサングラスを砂月の目の前に差し出す。

「見“守る”ことも、砂月の“守る”なんじゃねぇの?」

砂月は視線を落としてからにやりと挑発的に笑った。

「…那月がそこの女やお前を気に入ってるわけが少しわかったぜ」

そう言って笑った砂月が私の手からサングラスを奪った。

「今度は、2人で話そうぜ?」

砂月私にはそう言ってサングラスをかけた。

「あれぇ〜どうしたんです?セシル君と礫君」
「…一件落着かな?」

撮影の現場に行って七海があっと声をあげた。

「皆さんを屋上に…」
「屋上?」
「鍵を閉められて締め出されてると思うんです!!私、行ってきます」

走り出そうとした七海を止める。

「撮影、見ててやれよ。俺行ってくるから」
「え?でも…」
「いいから」

七海の頭をポンと叩いて屋上へ向かう。

「どうするんです?鍵、開けて貰えないと帰れませんよ」
「レディに電話すればいいんじゃないかい?」

あ、本当に締め出されてる。
鍵を開けて、ドアを開く。

「大丈夫?」
「礫!!?」
「礫だけど?ほら、撮影始まるからみんな行ってきなよ」

私の言葉に元Aクラスの2人と翔が走り出す。

「レンとトキヤは行かないの?」
「行きます。けど…礫がここに居る理由を聞いてからにしようかと」
「イッチーに同じく」

2人の言葉に私は笑ってしまった。

「俺、マスターコースの総監督ってこと、忘れてない?一応、監督者ってことで来てただけ」
「自分の仕事も忙しいのに…大変じゃないかい?」
「大変だよ。けど、仕事は仕事だから」

そう言ってから携帯を取り出す。

「まぁ、もう平気そうだから俺は帰るけどね」

マネさんの番号を出して電話をかける。

「もしもし、終わりました。はい、次の仕事行けます」

電話を切って2人に視線を移す。

「まぁ、そういうわけだから…またね。四ノ宮の姿見てあげて」

車に乗り込んで手帳を開く。

「どうだった?」
「もう、大丈夫ですよ。また乗り越えてくれましたよ、試練に。ただ、仕事の合間合間に見に行くのは、きつい…」

そう言って手帳を閉じた。


****


数日後

「よぉ」
「あぁ、砂月か」

仕事帰りの私の前に現れたのは砂月だった。

「四ノ宮、強くなったろ?」

四ノ宮の広告を思い出して微笑む。

「あぁ、そうだな…」
「それで、何か話したいことあったんだろ?」

砂月は少し視線を落とした。

「…お前は、何を隠してる?」
「え?」
「那月の中からお前を見てて、思った。お前は朱利をやめてからも自分とそれ以外に線引きしている」

…自分と、それ以外の…線引き…?

「そうだろ?礫」
「気のせいだよ、多分」
「そんなはずはねぇ」

きっぱりと言い切った砂月に視線を合わせる。
真っ直ぐな瞳に私が映った。

「線を引いたんじゃなくて、俺だけ違うんだ」
「は?」
「夢よりも大事なものを探してる。だから、夢を追うみんなとは違って見える」

砂月は眉間に皺を寄せてから溜息をついた。

「お前は、いつもわけわかんねぇな」
「そう?」
「まぁ…俺でよけりゃ話聞いてやる。…優しさじゃねぇぞ?ただの借りは返す」

那月の成長のために俺を止めてくれたこと感謝してる。
砂月はそう言って私に背中を向けた。

「用があったら、眼鏡外せ。そしたら、出てきてやる」
「…ありがとう、砂月」

去っていく砂月を見送る。

「大事なもの、か…」



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