臨時講師の件から数日。
早乙女さんに呼び出された。

「なんですか?」
「Mr.黒崎達とのコラボは完成したと聞きましたヨー」
「録音も終了してるけど…」

早乙女さんがニヤリと笑った。

「OKOK〜じゃあ、新曲出しちゃいまショウ!!」
「俺の?」
「いえすっ。記念すべきセカンドシングルデース」

私個人で出すのは2曲目か…
まぁアルバムを1枚出してるからもっとたくさん曲はあるけど。

「わかりました。準備しておきます」
「それから、Mr.四ノ宮に口紅のグラビア広告の仕事が入りましたヨー」
「あ、はい。そっちも把握しました」

渡された資料に目を通す。

「大人っぽくて、強くて、男らしいがコンセプト?」
「イエスッ」

これって、四ノ宮のイメージというよりは砂月のイメージに近いな…?

「あー…この撮影日俺仕事入ってるんだけど…」
「終わってから、急いで向かっちゃって下サーイ」
「了解です」

部屋から出て、手帳を開く。

「そういえば、そろそろ…」

手帳を開いたまま足を止める。

「礫!!」
「翔?どうした?」
「那月の仕事の件、聞いたか?」

翔の言葉に私は頷いた。

「あれ、砂月を見たカメラマンが頼んだらしいんだよ!!」
「へぇ、それで?」
「え?」

手帳を閉じて首を傾げる。

「別に心配することないんじゃないの?」
「はぁ!?何でだよ!?」
「…なんとかなるよ」

那月に足りないものは多分今回で補えるだろうし…
結局そういうのは七海がいれば、どうにでもなるだろうし。

「四ノ宮は弱い奴じゃないし、砂月も…悪い奴じゃない」
「そういや、礫は普通に喋れてたもんな…」
「まぁ、出会いが出会いだからな」

砂月が四ノ宮の傷ついた心から出来てるのだとしたら、七海が何とかできるだろうし…

「礫?」
「ん?あ、あぁ…ごめん。考え事。まぁ、信じてやれよ大事な仲間」

そう言って通り過ぎようとすると腕を掴まれる。

「翔?」
「…あの、さ…あ、ありがとう…」

俯きながら言った翔に首を傾げる。

「どうしたの?急に」
「な、なんでもねぇ…けど」

…あぁ、もしかして…
講演、聞いてたから…?

「じゃあ、俺からもありがとう。感謝してるよ」
「え?」

顔を上げた翔に微笑む。

「まぁ、内緒で俺の仕事を見に来たことは目を瞑ってあげるよ。あぁ、今回2回目だっけ?」
「え?」
「前にも1度来たよな。蘭丸さん達と」

翔が知ってたのか!?と目を丸くさせた。

「まぁ、一応な。だからと言ってどうするわけでもないけど。まぁ、来るなら事前に行ってほしい」
「え?行っていいのか?」
「別に構わないよ。突然だと驚くし対応できないから困るけど」

そう言って翔の帽子を下げて、翔の顔を隠す。

「ちょ、礫!?」
「…あの時のこと、憶えてるか知らないけど」

暴れる翔の耳元に口を寄せる。

「今は、死ぬ気はない」
「え?」
「だから、易々抱かれてやる気はないよ」

暴れていた翔がピタリと動きを止めた。

「生徒の前で話した時に思い出したんだよね」
「あ、あれは…あ、えっと…」

帽子を深く被ったまま翔の手が空中を彷徨う。

「無理に何かコメントを求めてるわけじゃないから気にしないで。俺、仕事あるからもう行くな」

帽子の上からポンと頭を叩いて歩き出す。
今日の仕事は…番組の撮影か…

「礫!!!!」
「ん?」
「あれは…」

手をギュッと握りしめた翔が赤い顔でこちらを見た。
真っ直ぐな瞳…

「あの気持ちは、嘘じゃねぇ!!!」
「え?」
「お前のこと今でも…す、好きだからな!!…じゃ、じゃあな!!」

すごい勢いで走り去っていく翔に呆気にとられる。

「今でも好きって…」

…一応、男なんだけどなぁ…
苦笑しながら溜息をつく。

「まぁ、ありがとう」

私はそう呟いて歩き出した。



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