凛視点

「すみませんでした」

俺は部長に頭を下げた。
あんな無謀なことが許されるはずがない。

「勝手なことをした責任はとります。退部させてください」
「松岡先輩…」
「似鳥…さっきは悪かったな…」
「そんなっ!!いいんです。それより先輩…退部なんて…」

眉を下げた似鳥。
俺達の会話を部長が止めた。
腕を組んで、鋭い目つきで俺を見据える。

「許さん。お前には別の形で責任を取ってもらう。たく、御影の言う通りか…」
「朱希の言う通り?」
「御影が言ったんだ。お前は前に進めたから、きっと鮫柄で最高のチームを見つけられる。だから、退部なんてさせないで下さいよ?アイツ単純なんで退部しますとか言うと思いますけど…だそうだ」

御子柴の言葉に俺は目を瞬かせる。

朱希が…そんなことを?
けど、なんで…

「さっきの泳ぎ、今度はうちのチームで見せて見ろ。鮫柄の最高のチームで」
「部長…」
「御影に礼を言っておけ。アイツがいなければ今頃お前は強制退部。前に進むことも出来てなかったぞ」
「はいっ」

部長が満足そうに笑った。

「さぁお前らーそろそろ帰んぞー」
「「はいっ」」
「おい中川先導してくれ。俺は後ろからついて行く〜」
「はい」

歩いて行く部長を見ていた俺は似鳥の名を呼んだ。
そして、少し目を逸らして呼び直す。

「似鳥。…いや、愛」
「え?」
「明日からまた練習、付き合えよな」
「はいっ凛先輩!!」

笑いながら似鳥が答えて、部長の後を追う。

「そうだ、松岡」
「なんすか?」
「理解者がいることは幸せだぞ」

部長の言葉に俺は首を傾げた。

「どういう意味ですか?」
「御影朱希。アイツは松岡をよくわかってる。だからこそ、松岡を救えないことを悔しがってた」
「え?」

俺を、救えないこと?
悔やむ?朱希が?

「松岡をよく知っている。それでも俺は腹立たしいほど無力だ…だそうだ」
「それを朱希が…?」
「あぁ。あまり、悩ませてやるなよ御影を」

御影が、俺のことで悩んでる?
そんなの、俺は知らない。

「なんで部長が朱希のことをそんなに…」
「昨日の夜会ってな。少し話をしたんだ」
「は?」
「いい奴だなー、アイツ。他のやつに取られんよう気をつけろよ」

ニヤリと悪戯をした子供のように部長が笑い顔が紅くなるのが分かった。

「…マジかよ…」

朱希視点

会場を眺めながらポツリと渚が呟く。

「終わっちゃったね」
「また来年来られるかな…」
「来てもらわないと困ります。今度は僕がリレーで美しいバッタを披露するんですから」
「だよねっ」

彼らが笑う。

「大丈夫だ。きっと来られる」

青春物語も、あながち間違ってないよな…

「朱希」
「はい?」
「朱希は絶対に全国大会で1位を取って来い」

遙さんの言葉に俺は笑う。

「そんな当たり前なこと言わないでくださいよ。部費アップのために頑張りますよ。それから…」
「それから?」
「岩鳶に帰ったら全てをお話ししようと思います」

彼らの目を見てそう言えば驚いた顔で顔を見合わせる。

「4人と、コウに全て…俺の怪我のこと俺に起きた全てのこと…聞いてくれますか?」
「そりゃ、聞くけど…」
「いいの?朱希ちゃん…」
「コウには言ってあったんすけど…もっと早くから話そうとは思ってたんです」

え?と目をぱちくりとさせた真琴さん。

「けど、そのためにはどうしても凛がいないと駄目だったんすよ。だから皆さんが和解するまで隠させてもらいました」
「どうして凛さんが必要なんですか?」
「カッコ悪いことに過去のことはトラウマになっててね…思い出すだけで震えが止まらなくなる。それを止められるのが凛だから」

凛に連絡しておこう。
会いに来るっていてたし、そのついでに彼らに話せばいい。

「結局、朱希にも凛が必要なのか」

遙さんの言葉に俺は苦笑する。

「そうなんすよねー、困ったことに」
「いいんじゃないか?お互いに必要としているなら」
「何がいいのかは分かんないっすけど」


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