「コウ」
「あ、朱希君!!おはよう」

朝練に向こうとしていた俺の前を歩くコウを見つけて駆け寄る。

「はよ」
「昨日、お兄ちゃんとどうだった?」
「初っ端にそれ聞くか?」

苦笑しながら言えば、気になるじゃんと目を輝かせて答えた。

「お陰さまで、付き合うことになったよ」
「本当に!!?お兄ちゃんにおめでとメール送らなきゃ!!」
「ちょ、それはやめてやれよ!!?アイツ流石に泣くぞ!?」

慌てて止めようとすればコウは笑いながら俺を見る。

「そしたら朱希君が慰めてくれるでしょ?」
「それは、そうだけど…」
「たった一人のお兄ちゃんの幸せ…喜ばない妹はいないのっ!!えいっ、送信」

携帯に映る送信しましたの文字に溜息をつく。

「嫌な予感しかしねぇ…」
「お兄ちゃんのこと泣かせたら許さないからね」
「いや、今コウが泣かせてんだろ…」
「私はいいの」

あと少ししたら鳴り出すであろう携帯を見つめて溜息をつく。

「朝練はできねェな」
「そっかー朱希君とお兄ちゃんが…て、ことは朱希君とは兄妹になるの?」
「…変なこと言うな」
「えー、いいじゃない」

頬を膨らますコウを見て溜息を零せば鳴りだした携帯。

「もしもし、凛?おはよう。さっき別れたばっかりだけどな。学校ちゃんと間に合ったよな?」
『そんなことはどうでもいいっ!!江が…江が!!』
「知ってるよ。バレたんだろ?」

隣でニヤニヤしているコウの額にデコピンをして溜息をつく。

「結構前から俺らの気持ちバレてたんだよ」
『はぁ!!?俺、江に会せる顔ねぇんだけど!!』
「コウはお前が思ってるより強い子だよ。俺らのこと普通じゃないってわかってても凛が笑ってくれるならそれでいいって。いい妹だな」

顔を真っ赤にして俺を見てるコウに舌を出して笑う。

「やられっぱなしは趣味じゃねェの」
「わざわざ言わなくてもいいでしょ!?」
『…朱希、今江といるのか?』
「おう。凛を送ってから朝練に行こうとしてたら偶然会った」

電話の向こうの凛が黙り込む。

「凛?」
『…江に悪いって伝えてくれ。』
「それだけでいいのか?
『…けど、幸せだって』

小さな声で言った凛に俺は微笑む。

「俺もだよ」
「ねぇ、朱希君何の話してるの!?気になる!!」
「ん?凛が、悪いって。けど幸せだよってさ。だから俺もって答えただけ」

電話の向こうで顔を真っ赤にしているであろう凛を思い浮かべてまた頬が緩む。

「あーっ朱希君ニヤけてる!!」
「そりゃ大好きな奴といられて幸せだし?」
『朱希!!』
「怒んなよ、りーん。また電話かけるから」
『…どうせ兄貴のとこ行くんだろ?』

凛の言葉にそうだけど、と返すとまた黙り込む。
電話の向こうから似鳥が凛を呼ぶ声が聞こえた。

『俺も走るから…あー、その…』
「…素直に会いたいって言えよ」
『っ!!べ、別にそういうわけじゃ!!』
「練習終わったら鮫柄の校門まで迎えに行くから準備しとけよ」
『…おう』

電話を切れば嬉しそうに笑うコウ。

「ラブラブ?」
「そりゃもちろん」
「たまには返してよね、お兄ちゃんのこと」
「はいはい」

コウは優しく笑った。
凛によく似た笑顔だ。

「ありがとね、朱希君」
「は?何が?」
「お兄ちゃんの隣にいること、選んでくれて。男同士とか…やっぱり、抵抗ある人もいるでしょ?」

そういって俺を見上げたコウの額を指で弾く。

「それは、俺から言いたいよ。俺と凛はオーストラリアにいただろ?向こうは同性愛者って結構いたんだよ」
「そう、だったんだ…」
「だから、別に抵抗とかないし…それに男だろうが女だろうが俺が好きになって選んだんだからいい。けどコウはそういうの知らないだろうし実の兄と同級生だろ?」

そうだね、とコウは頷く。

「だからさ、コウが否定しないでくれるのって結構嬉しいんだよ。だから、ありがとうってのは俺のセリフ」
「朱希君じゃなかったら認められなかったかもしれないけど…朱希君には心配せずにお兄ちゃんを任せられるから」

そう言ってコウが走り出す。

「まだ朝練間に合うよ。行こう!!」
「…そーだな」


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