真琴視点
凛の声と、壁に何かがぶつかる音がしてドアを開ける。
そこには、凛と御影君がいた。
御影君の胸ぐらをを掴んで壁に押し付ける凛と、少し苦しげに顔をしかめる御影君。
「ちょっと、何してんの!!?」
俯いたままピクリとも動かない凛。
御影君は苦しげに息を吐いてから、容赦なく凛の頭に頭突きをした。
「えぇ!!?」
「っ!!?」
痛みで手の力が緩んだらしく自由になった御影君が咳き込みながら壁にもたれる。
「御影君、大丈夫?」
「あー、慣れてるんで平気っす」
息を整えた御影君が、頭を押さえて座り込んでいる凛の胸ぐらを掴んで無理矢理立たせる。
「ちょ、御影君!?」
「いいか?さっさと、俺を忘れろ。それがお前のためだ」
「嫌、だ」
凛が小さく返した言葉に御影君は舌打ちをする。
「なんで、クロールじゃなかった…なんで、水泳部に入ってねぇんだよ…なんで、俺の前から消えたんだよ!!!全部、答えろ…答えねぇ限り、俺はお前を忘れる気はねぇ」
「クロールじゃないって…?」
「コイツの専門は、クロールだ」
「え?」
御影君は突然手を離して、髪をぐしゃぐしゃとかき乱しながら大袈裟なくらいの溜息をついてみせた。
「知ったところでどうなる?世の中知らねぇほうがいいこともあんだぜ?」
「俺は知りてぇ」
「めんどくさ」
御影君はそう吐き捨てて出口に歩いて行く。
「凛…」
「アイツ、水泳部入ってねェの?」
「うん…断られてる」
凛は俯いたまま御影君と逆方向に歩いて行く。
「ちょ、凛!!?」
「邪魔して悪かった」
凛の背中に、御影君の背中が重なる。
御影君と同じで、寂しそうな背中だ…
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