合同練習が終わって、家に帰った俺はずっと開けられずにいた缶に手を伸ばした。
だが昔した約束を思い出してしまい、開けようとした手を止める。
「…約束…」
なんで、忘れていたんだろう。
右手の小指を見つめて苦笑する。
約束なんて無視して開けることもできる。
だれも止めはしないから…
けど、やっぱりできなかった。
「…約束、守らねェとなぁ……」
約束守るまでこれはお預けだな…
缶をクローゼットにしまって溜息をつく。
「…て、ことは…あれか…」
水泳部…入らねェといけねェのか…
「明日橘さんのところ行こう…」
次の日の朝、橘さんの教室に向かった。
「あれ、御影君?どうしたの?」
「…水泳部入ります」
「え?」
橘さんの向こう側に座る七瀬さんは興味なさげに窓の外に視線を向ける。
「どうしたの、急に?あ、入ってくれるのは嬉しいんだよ?」
「守らないといけない約束があったのと…七瀬さんに説得されたんで」
「え?ハルが!!?」
「してない!!」
こちらを睨む七瀬さんから目を逸らす。
「あ、けど俺は…1人でしか泳がないんで」
「リレーは…」
「出ないっす」
橘さんはガクンと肩を落とす。
「まぁ、入ってくれるだけでありがたいけど…」
「いろいろ失礼なこと言ってすんませんでした。橘さん」
「いや、それはいいんだけど…。あ、そうだ…」
橘さんは俺を見て微笑む。
「真琴でいいよ。ハルのことも苗字じゃなくていいよね?」
「勝手に決めるな」
「…じゃあ、真琴さんと、遙さん?あー…朱希でいいっすよ。あんま苗字慣れてないんで」
「じゃあ、朱希。改めてよろしくね?」
差し出された手を握ると真琴さんは嬉しそうに笑った。
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