練習メニューを半分ほど終わらせて壁に寄りかかる。


途中で竜ヶ崎が水に飛び込んでたけど…
「アイツやっぱりカナヅチなのか?」

沈んでいく彼に心の中で溜息をつく。
結局基礎から真琴さんと渚が教えることになったらしい。

ちょうど泳ぎ終えた遙さんに松岡が声をかける。

「遙先輩って何のために泳いでるんですか?」
「別に、理由なんかない」
「お兄ちゃんはオリンピックの選手になるのが夢なんです。そのためにオーストラリアに留学までして…」
「俺には関係ない。それに所詮夢は夢だ」

松岡は遙さんの言葉に俯く。
「そうかもしれません。でも、遙先輩達と一緒ならその夢に少しでも近づけると思うんです。あの時のリレーみたいに」

凛の夢、今も変わってねぇのか…
泳ぎ始めた遙さんを見ながら松岡が微笑む。
それをみて、俺はプールに飛び込んだ。

少ししてプールサイドに上がると松岡が駆け寄ってくる。


「御影君、休憩?」
「メニューは終わらせたからな。あー寒ぃ…」

プールから出て髪の水滴を払う。

「お兄ちゃんの夢のこと…御影君は知ってた?」
「オーストラリアに来て早々、俺に宣言してた」
「そっか」

体に張り付くパーカーを剥がして背中を摩る。

「松岡はどれくらい俺のこと聞いてるかしらねェけど…俺が凛といたのは1年にも満たない短い期間だ」
「え?」
「中学になる前くらいに凛はオーストラリアに来た。俺がアイツの前から消えたのは…中1の冬だ」

松岡が目を瞬かせる。

「俺がお前に初めて会った、あの冬。俺は凛の前から消えた」
「なんで…」
「色々あんだよ、俺にも。だから…俺は凛のことは詳しく知らねぇ…俺が消えた後の数年間何があったかも、俺にはわからねぇ」

松岡がそっか、と言って俯く。

「けど…お前と会ったあの冬。確かに俺と凛は…友達と呼べる存在だった。もしかしたら、それ以上かも知れねぇけど…」
「今は…?」
「今は違うと俺は思ってる。まぁ、そういうわけだから…これ以上凛についての詮索はやめてくれ」

俺の言葉に松岡が頷いたのを確認してプールに飛び込む。

松岡に初めて会ったのは凛と一緒に日本に帰省したときだった。
俺の全てを狂わせたあの冬…か。


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