残り、あと5日。
今日は生憎の雨だった。
「えーこれより、なぜ怜ちゃんが泳げないのかみんなで考える会を始めたいと思います。意見のある人―?」
渚の司会で始まった謎の会合。
場所は遙さんの家だ。
「水に嫌われてる」
真顔で言った遙さん。
「怜ちゃん可哀想…」
「んな、わけないだろ!!?」
「運動神経鈍いとか?」
「怜ちゃん走るの速いよ?テストの点数もいいし」
一応会議らしく話し合う彼らの話を聞きながら部屋にあった水泳雑誌を眺める。
「頭もいいのかー」
「サバ好きなのか?」
「DHA…」
…話逸れてね?
「わかった!!頭が重いんだ!!」
「勉強のし過ぎで脳みそが!!」
「もういいです!!そもそも皆さんの教え方が悪いんです!!ちゃんとしたコーチがいれば僕だって!!」
「コーチ…コーチと言えば!!」
そんなわけでやってきたピザ屋さん。
「はぁ?カナヅチの面倒見ろってのか?元コーチの俺に」
「意義あり。僕は少なくとも浮くのでカナヅチではありません。たとえるならそう、潜水艦だ」
「俺は忙しいんだよ。それくらいお前らが教えてやれ」
帰っていったピザ屋さん。
どうやら彼は水泳のコーチだったらしい。
「あ、うまい…」
1ピースだけ貰ったピザを食べながらページを捲る。
「朱希ちゃんは、何か意見ある?」
「てか、ずっと話に参加してなかったね」
「んー…」
雑誌を閉じて、竜ヶ崎を見る。
「自分で泳ごうとするときお前は頭を使って泳ぐから、筋肉が堅くなって動きが鈍くなる。で、力が入ってる状態で人は浮かないから沈む。逆に誰かに手を持ってもらってるときは考えてないから浮く」
「えっと…どういうこと?」
首を傾げた渚に溜息をつく。
「人間って頭で指令を送って体の部位を動かすわけだけど…指を1本動かすときにこう動かそう、っていう考えなんて頭にはないだろ?」
「うん」
「けど、竜ヶ崎はマニュアルを頭に入れてるからこう動かそうっていう手本があるわけだ。それの通りにやるために頭で考えて、体の部位を動かす。だから体堅くなって、沈むんじゃね?」
渚と真琴さんがおーっと声をあげる。
「じゃあどうやって泳ぐんですか!!?」
「マニュアルは捨てて、自分の泳ぎやすい形で」
「無理です!!」
なんか、めんどくせー…
溜息をついて俺はまた雑誌を開いた。
水着買いにいかねェとな…
「これがお勧めだ」
遙さんが指差す水着はいつも遙さんが使っているのに似たやつ。
「…ショートスパッツ型っすけど」
遙さんは何も言わずに目を逸らす。
あ、この人俺の傷のこと忘れてただろ…
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