残り、2日。
新しい水着を着た竜ヶ崎が自信ありげにスタート台に立つ。
感嘆の声をあげる真琴さん達を見ながら、遙さんの隣で濡れた髪を拭く。
「本当にロングジョンなんだな」
「そうっすけど…傷も隠れるし、助かります」
「そうか」
結局竜ヶ崎は華麗に沈んだらしく落胆する真琴さん達。
遙さんは俺にタオルを放り投げて水に飛び込んだ。
「俺が教えてやる。泳げるようになりたいんだろ?」
「よ、よろしくお願いします!!」
「ただし、俺はフリーしか教えない」
「はいっ」
俺は遙さんのタオルを畳んで、真琴さんの隣に座る。
「ハルが人に教えるなんて…」
「真打登場って感じだね!!」
結構真面目に教えている遙さんを一瞥してスタート台に立ち、プールに飛び込んだ。
日が沈み辺りがオレンジ色に染まった頃、特訓が終わったようだった。
「教えられることはこれで全部だ。あとはお前次第。自分を信じてやってみろ」
「はいっ」
遙さんのカッコイイセリフに背中押され、泳ぎだした竜ヶ崎だったが結局ほとんど進まずに沈んだ。
「天才とは1%のひらめきと99%の努力。」
「エジソンの名言?」
「努力に勝る天才なしってことですね」
「やっぱり地道に練習するしかないのかなー…」
天ちゃん先生は日傘で顔を隠しながら、言葉を続けた。
「だがしかし、このエジソンの名言は1%のひらめきがなければいくら努力しても無駄っていう意味もあるのよね?」
「努力全否定!!?」
1%のひらめき、か…
俺はプールから上がって首を傾げる。
「どうにか泳いでくんねーかな…」
落ち込む竜ヶ崎にタオルを渡すと、遙さんがこちらに歩いてきた。
「遙先輩…」
「もう好きにしろ」
「どういう意味ですか?」
「泳ごうと思うな、飛べばいい」
遙さんの言葉に竜ヶ崎は真顔で返答する。
「意味が分かりません」
「心で飛べ」
「もっと意味が分かりません」
「感覚で…」
「そういう抽象的な言い回しはやめてください」
飛べばいい、か…
俺は遙さんの言葉に口角をあげた。
「どうしたら遙先輩のように、あんな風に自由に泳げるんですか?僕は悔しい。なぜ自分にはそれができないのか…」
「俺も自由じゃない…」
蝶が遙さんの体に止まる。
俺はそれを見て、部室に向かう。
「ハルちゃんたち何やってんだろう?」
「渚、今はそっとしておこう。それにひょっとしたらあの2人似た者同士なのかもしれない」
「そうだね」
2人の会話を聞きながら松岡の所に行く。
「ねぇ、ちょっと頼みあんだけど」
「何?」
「プールの鍵、明日の朝貸してくれない?」
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