「あれ、御影。帰るのか?」
「あぁ、帰る」
「部活入らねェの?」
HRを終えて帰る準備をしていた俺に声をかけてきた友人はジャージを身に纏っている。
「入らないよ」
「運動苦手なのか?」
「んー…そこそこ?」
首を傾げて言うと彼はクスクスと笑う。
「嘘くせー」
「ひでぇな、おい」
「どう?俺と同じ部活」
「遠慮する。じゃあな」
鞄の中にしまっていた黒いヘッドホンを耳につけてウォークマンを弄る。
校門に差し掛かった時見えた見覚えのある髪色に足を止める。
「今日メール送ったってのに、今日来るやつがいるんだな…」
音量を少し上げてそいつの前を通り過ぎる。
まぁ、そんなに上手くいくはずもなく目の前に立ったそいつ。
顔を上げずに避けようとすると俺の行く手を塞ぐように前に立つ。
「邪魔」
短く吐きだした言葉に目の前のそいつはぴたりと動きを止めた。
視線をあげるとあの頃より大きくなった凛がいた。
何かを言おうと口を開いた凛の横を通り過ぎる。
今更聞く言葉も、会う理由もない。
背中に突き刺さる視線を無視して足早に家に向かった。
凛視点
江からのメールを見て、俺は岩鳶高校の前に来ていた。
部活があるからか出てくる生徒は疎らだ。
じっと出てくる人たちを見つめながら目的の人を待つ。
「あ…」
校舎から出てきた姿に、壁から背を話す。
彼は最後に会った時よりも大きく、大人っぽくなっていた。
以前と変わらぬ黒いヘッドホンを耳に付けたそいつは下を向いたまま俺の横を通り過ぎようとした。
きっと声をかけても聞こえない。
体は自然と彼の前に立ち塞がる。
「朱希…」
名前を呼んでも返事はない。
視線をあげることもなく俺を通り過ぎようとする朱希の前を塞ぐ。
「邪魔」
何度か同じ行為を繰り返すと酷く短く冷たい声が耳に届き体が固まる。
やっとこちらに向けられた瞳は今まで見たことないくらいに鋭かった。
「あ…」
言いたいことはたくさんあった。
それでも、その瞳を見た瞬間言葉を失った。
すぐに視線を逸らして歩いて行く朱希を追いかけることさえもできなかった。
「…朱希…お前、どうして…」
どうして…そんなに冷たくなっちまったんだよ…
離れていく背中を見つめながら舌打ちをする。
「クソッ」
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