朱希視点

「ただいま」

返事が聞こえないとわかっていながらも呟いて、机に鞄を置く。

物の少ない部屋の隅に置かれた段ボールを開ける。
「確かこの辺りに…あった」

少し幼い字で書かれたノートを見て微笑む。
何枚かページを捲って、手を止める。

「あった…」

今までとは変わって、綺麗な字で書かれたそれをじっと見つめる。

「このスイミングクラブに行けばいいのか…」

ノートを閉じて、ベッドに寝転ぶ。

「まぁ…明日でいいや…」

今日の夕飯…どうすっかなぁ…
あぁ…ダメだ…眠い…

重くなった瞼を閉じて、闇に沈んだ。


次の日、ノートに書かれたスイミングクラブを探していた。

「あぁ、それなら…今度取り壊しになるって。そこを曲がったところにあるよ」

通りかかった人に聞くと、そんな風に返事が返ってきた。

「取り壊し…」

言われた通りの場所に行くと随分と古びた建物があった。

「ここが…」

書かれた時期から考えて古いだろうと思ってたけど…まさか潰れてるとはね…
暗くなった辺りを見渡し人がいないのを確認して中に入る。

「男子のロッカールームってどこだろう…」

一応持ってきておいた懐中電灯で地面を照らしながら歩いていると、すぐにロッカールームが見つかった。

「おー…あった、あった…」

ノートを見ながら211番のロッカーを探す。
所々番号が取れていてわかりにくいが、多分これが211番のロッカーだから…

「ロッカーの方を向いて右に5歩…前に8歩、左に…」

てか、これどこのゲームだよ…
つーか、1歩ってどれくらい?

溜息をつきながら暗いロッカールームの中を歩く。

「一応指示通りだとここだけど…」

一歩後ろに下がって床を叩く。

「ただの床だしなー…」

やっぱり1歩の大きさが違うのかな〜…

「これを書いたときの歩幅ってどれくらいだ?」

てか、何かを隠してるってことはなんらかの目印があるはず…
それに、コーチとかにバレないようにしてるだろうし…

「見つかんのかな…これ」

古びたベンチに腰かけて、懐中電灯を消す。
暗くなったロッカールームで小さく溜息をついた。

「ん?ベンチ?」

自分の座ったベンチを懐中電灯で照らす。

「ベンチの下ならバレないんじゃ…」

ベンチをずらして地面を照らすとひび割れた線が沢山入っている。

「…当たり…かもな」

懐中電灯を口に咥えて、ひびに指をかけて床板を外すと下にクッキーの缶が入っていた。
缶にかかった砂を手のひらで払うと見覚えのある字が見えた。

「たからばこ…ね」
「お前、なにしてる?」

その缶を開けようと手をかけたとき後ろから聞こえた声に俺は手を止めた。


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