真琴さんたちから逃げた俺は結局学校まで戻ってきてしまっていた。
門の横の壁に背中を預けてしゃがみ込み、未だに震える両手を握りしめる。
それでも、震えが止まることはない。

そんなときにかかってきた電話。
液晶を見ずに震える手で通話ボタンを押して耳にあてた。

「もしもし」
『……朱希…』

あれ、この声…
慌てて液晶を確認して電話の向こうに聞こえないように溜息をついた。
凛かよ…

『…お前、何で…』
「…なんで俺の電話で俺が出て驚いてんだよ」
『いや、だって…お前今まで1度も出なかったし…』

今回もお前だとわかってたなら俺は出てない。
「なんか、用?」
『いや…県大…どの種目…出るか知りたくて』
「…遙さんはフリー。距離はきっと短距離だな。真琴さんはバックで渚はブレ」 
『アイツらじゃなくて、お前の…』

壁に背中を預けたまま空を仰ぐ。

「…決めてねェわ」
『そう、か…』

いつの間にか手の震えが止まっていた。
震えの止まった手を紅くなった空にかざす。

「止まってる…」
『何が?』
「いや…こっちの話」

意味わかんね、と凛が電話の向こうで言ったのが聞こえる。
凛の声を聞いて…止まったのか?

「マジかよ…うわー」
『朱希?』
「なんか、信じたくねぇんだけど…」

震えの止まった手を動かしていると、電話の向こうで不思議がっている凛の声が聞こえて自然と笑みがこぼれた。

「サンキュ、凛」
『は?何が?おい、朱希?』
「なんか、助かった」

電話の向こうが静かになった。

「凛?」
『お、お前…何言ってんだよ…』
「…照れてんの?」
『べ、別に…』

ゆるりと立ち上がって、自分が戻ってきた道を見る。
今から行った方が良いのか?遙さんの家…
合宿のこと決めるだろうし…

『…なぁ、朱希…』
「んー?」

遙さんの家の方に歩を進めながら電話の向こうの声に耳を傾ける。

『……たい』
「凛?」
『会い、たい…朱希に』

遙さんの家に向けていた足を止める。

「……お前、どこの彼女だ」
『なっ!!?ちがっ』
「それに…俺との写真飾るとか恥ずかしくねーの?」
『なんで、お前それ…』

驚いている凛に俺は溜息をついた。


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