夕方ごろ、やっと今日のメニューが終わった。


「こんなに遠泳がきついものだとは…」
「初めてにしては上出来だよ。よく頑張ったな」

真琴さんの言葉を聞いた竜ヶ崎は目を伏せる。
その表情に嫌な予感がした。

「お疲れさま」

松岡からタオルを貰って、濡れた髪を乱暴に拭く。

「やっぱり地獄の特訓メニューはきつかったですか?予定の半分くらいしかこなせてない」
「まぁ、初日はこんなもんだよ」
「あ、明日はもっと頑張ります」
「怜ちゃんなら大丈夫だよ」

キリキリと胸の辺りが痛む。

「はーい、反省会はそのへんにして暗くなる前に食事にしましょうか」
「ボクおなかペコペコ…」
「あら、いけない。調味料忘れちゃった…」
「私宿で借りてきます」

そう言って宿に走って行こうとした松岡を止める。

「朱希君?」
「あ、いや…気を付けて」
「え?うん」

不思議そうな顔をした松岡から視線を逸らした。

戻ってきた松岡はどこか嬉しそうな顔をしていた。
ピザの上にサバやホッケ、パイナップルを乗せる遙さんや渚に溜息をつく。

プレーンのピザを1つ手に取って柵にもたれ掛りながら口に運ぶ。
夕陽が海に沈んでいくのを見ながら、キリキリと痛む胸を撫でる。

「怜、練習メニューのことなら気にしなくていいよ」
真琴さんが浮かない顔をしていた竜ヶ崎にそう伝える。

「ゆっくり上達してけばいいから。それより、俺は…みんなでこうやって練習したり合宿したりでき事の方が嬉しい。もちろん記録も大事だけど、やっぱりこんな風にみんなと泳げることが一番うれしいんだ」
「はい」

1ピースだけピザを食べた俺はパーカーポケットに手を入れる。

「あれ、もう食べないの?」
「ん、俺はいいや」

渚が残念そうな顔をする。
それに苦笑して、ごめんと言うとすぐに竜ヶ崎の方に歩いて行った。

「まだ1ピースしか食べてないでしょ?」
俺にピザを差し出す真琴さんが優しく微笑む。

「お腹すいてないの?」
「…俺、基本的に飯食わないんで」
「え?それはダメ!!ちゃんと、食べて」

ね?と俺の顔を覗きこむ真琴さんから目を逸らして胸のあたりのシャツを掴む。
「…今日は、勘弁してください」
「えー、じゃあ明日の朝はちゃんと食べてね?」
「善処します…」


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