「…電話は?…もう、出てくんねぇの?」
「…気が向いたらな…」

頬に触れた冷たいモノに俺は空を見上げる。

「雨…」
「え?」

風が強いとは思ってたけど…
突然暗くなった辺りに凛の手を握る。

「朱希?」
「雨…降るぞ」
「え?」

屋根のあるところに入るころには俺達の体を雨が濡らしていた。

「…さっきまで晴れてたのに」
「天気なんて突然変わるもんだろ」

クシュッと横でくしゃみをした凛に俺は溜息をつく。
「走った後に体冷やしたからな…大丈夫か?」
「そんな柔じゃねぇよ」
「ならいいけど」

胸のあたりの痛みが尋常じゃなく強くなる。

「朱希…?おい、大丈夫か?」
その場にしゃがんだ俺の顔を凛が覗き込む。

「怜!!!!」

遠くから真琴さんの声が聞こえた気がした。

竜ヶ崎のあの浮かない顔…
同じテントの真琴さんと竜ヶ崎…
急に変わった天候…
真琴さんの声…
荒れてるであろう海…

頭の中で何かが繋がる。

「…ヤバい」
「え?」
「俺の嫌な予感は…こういう事かよ…」

痛む胸を無視して立ち上がる。

「おい、朱希…?」
「通り雨にしてもこの雨はまだやまないだろうから」
「え?」

着ていたパーカーを脱いで凛の肩にかける。

「別に濡らしてもいいから、体は冷やすなよ。凛」
「ちょ、おい!!朱希、お前は…」
「これからもっと濡れることになりそうだから」

凛視点

突然俺の肩にパーカーをかけた朱希は、雨の中どこかに走って行く。

「…朱希…」

少し大きめの朱希のパーカーを着て、そこにしゃがみ込む。

「…だから、優しいって言ってんだよ…」

雨の中に消えた朱希の方を見て小さく溜息をつく。
「アイツ…大丈夫なのか…?」

苦しげに胸を抑えていた姿が鮮明に思い出された。

「無理すんなよ」

少し長い袖をきゅっと握って雨を降らす空を見つめた。


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