聞こえた声はどこか聞き覚えのある声だった。
「………朱希…」
「凛…」
ライトを咥えたまま振り返ると目を見開いた凛がいた。
「チッ…タイミング悪ぃな…」
缶を持ってきていた袋に入れて溜息をつく。
「朱希…どうして、ここに」
「頼まれたからだ」
懐中電灯を消して凛に視線を向ける。
「昨日無視して帰った意味がねぇな、これじゃあ」
「っ!!お前っ!!!」
胸倉を掴まれて、勢いよくロッカーに押し付けられる。
「痛ッ」
「どうして俺の前から姿を消したんだ。朱希!!」
「…どうして?そんなことを答えてどうなる」
地面に落ちた缶が大きな音を立てる。
「離せ」
「理由を聞くまで離す気はねぇ」
「1個下の野郎を襲う趣味があったのか?」
俺の言葉に顔をしかめた凛を鼻で笑う。
「1個下って自覚があんなら敬語くらい使えよ」
「悪ぃけど今更お前に敬語なんか使えねぇよ」
胸倉を掴む腕を握って、睨み付ける。
「生意気だな」
「だからなんだ?今更だろ。早く手を離せ」
「俺の質問に答えるのが先だ」
俺は溜息をついて自由な右手で拳を作って、凛の腹に叩きこむ。
「痛っ!!?」
「離せっつってんだよ」
手が離れ、自由になった首をコキッと鳴らし、蹲った凛を見下ろす。
「…俺が喧嘩強いの忘れたか?」
「ダチを本気で殴る奴がいるかよ…」
「ダチねぇ…胸ぐら掴んで襲いかかってきたやつが何言ってんだか」
ヤレヤレと首を振って、床に落ちた袋を拾う。
「じゃあな。もう会わないことを願うよ。凛」
「なっ!!?」
背中を向けてひらひらと手を振る。
「おいっ待てよ!!朱希!!!!」
背中で凛の声を聞きながら足を動かす。
「…さっさと俺のことなんて忘れろよ、凛…」
俺はもう、お前の隣にいれない…
袋を持った手をきつく握る。
「ごめんな…凛」
凛視点
離れていく背中に伸ばした手は何も掴めない。
「なんなんだよ、朱希のやつ…」
あの生意気な喋り方は変わらないのに、前と違って距離を感じる。
殴られた腹を摩りながら立ち上がる。
「なぁ、どうしたんだよ…朱希」
俺のこと、嫌いになったのかよ…
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