「お前種目なに出るんだ?」
「個人メドレー400」
「…フリーの1500は?お前の専門だろ?」
「まぁね。けど…今回は泳がない。てか、もう泳がねェかも」
顔に伝う汗を服の裾で拭って苦笑する。
「なんでだよ。お前ハル並にフリーの長距離好きだったろ?」
「まぁ、気が変わったんだよ」
「個人メドレーか…まぁ朱希は何でも速ぇけど…」
不服そうな凛にこれ以上の詮索をされないように話題を変える。
「凛は…遙さんに勝たないと前に進めないんだろ?」
「あぁ…」
「…ホントに単純って言うか一途って言うか…」
「悪いか」
別に、と言葉を返して手元の時計を見る。
まぁ俺もつくづく単純か。
変わることのない記録と競ってるわけだし…
「朱希」
「ん?」
「どこまで走るんだ?ここ、鮫柄だけど」
あぁ、そう言えばこの辺りは鮫柄なのか…
忘れてた。
「…あー…まぁ、うん」
「なんだよその曖昧な返事」
「いや…」
言うべきことではないよなー…
あそこ、墓だし。
「あ…」
「なんだよ」
大会に出れば、傷のことコイツにもバレるのか。
凛の顔を見つめて溜息をつく。
「人の顔見て溜息つくんじゃねぇよ」
「いや、うん…悪い」
さっさと、話してしまえばいいんだけど…
散々俺がコイツを避けた意味がなくなるし…
いや、もうすでにないか?
「まぁ、いっか」
「はぁ!!?」
「俺、もう行くわ」
「お前、行動が唐突すぎんだよ」
走ろうと背中を向ければ腕を掴まれる。
「何?」
「質問に答えてねェけど」
「どこまで走るかって、あれ?んなもんテキトーだ、テキトー」
そう言って腕を払えば呆れた顔。
「お前はそういう奴だったな…」
「…無理、すんなよ。松岡先輩」
「ちょ、おい!!」
走り出して、両耳をイヤホンで塞ぐ。
「まぁ、なんとかなるだろ」
俺を忘れろとはもう言わない。
無理っぽいし…
彼に背負わせないように慎重にやればいい
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