大会当日。
俺は真琴さん達とは別行動で大会の会場に行くことを伝えた。

向かう場所はやはり、お墓。

「おはよう」

墓に花と供え物を置いてそこにしゃがむ。

「今日から大会なんだ。俺が出るのは2日目。凛って覚えてる?オーストラリアで俺と一緒だった1つ上の奴。今日さ、アイツも大会で…」

風が新しく供えた花を揺らす。

「ライバルと、戦うらしいよ。そのライバルが俺の学校の先輩でさ…応援しにくいよな」

トクトクと鼓動を刻む心臓。

「楽しみか?泳ぐのが…」

俺は小さく笑って、胸を撫でる。

「明日まで、我慢な。明日になったら泳いでやる。それで…約束守るから」

そこから立ち上がって、背中を向ける。

「明日になったら…全部バレちゃうんだよ。俺が凛に隠してきたことが…」

ぴたりと風がやんで、辺りが静かになる。

「……じゃあ、行ってきます。」

風が背中を押した。
電車に乗って最寄駅に着けば見覚えのある後ろ姿を見つけた。

「はよ、凛」
「うわ!!?朱希!?」

イヤホンを外してひらひらと手を振る。

「1人?」
「まぁな」
「…親父さんのとこにでも行ってたのか?」

俺の言葉にあぁ、小さく返事をした凛。

「そか…」
「お前は?まさか、寝坊?」
「いや、それはない。ちょっと、会いたい人がいてさ…会ってきただけ」
「あっそ」

ふい、と顔を逸らした凛。

「…お前の競技…明日だよな」
「そうだよ。見るの?」
「ダメかよ」
「…いや、構わないけど…後悔しないでね」

は?と間抜けな顔をした凛に俺は微笑む。

「どういう意味だよ。お前が速いってことは知ってるけど?」
「そういうことじゃないんだよ…まぁ、明日になればわかるよ」
「意味わかんね」

眉間に皺を寄せた凛に俺は苦笑する。
そうだ、嫌でも…明日バレる。

「凛…」
「なんだよ」
「…俺を忘れておけば、こんなことにはならなかったのにな」

受付を済ませて、中に入る。

「どういう意味だよ」
「…明日までのお楽しみ?じゃあ、頑張れよ凛」
自分より低い位置にある凛の髪をかき乱して、背中を向ける。

「マジで、意味わかんね…」

そう呟いた凛に俺は心の中で謝った。


戻る

Top