「今日はもう遅いよ。みんな帰った方が良い」
「でも…」
「多分、ハルは泳がない。棄権しよう」

真琴さんがどこか悲しそうに目を伏せた。

本当は一緒に泳ぎたいんじゃないかな…

渋々3人が帰っていくのを見届けて俺も帰ろうと立ち上がる。

その時に目に入ったあの写真、凛が楽しそうに笑って真琴さん達と写っている写真を手に取った。

「朱希も帰りな?明日、試合なんだし…」
「…真琴さん、ごめんなさい」
「え?」

自分の胸のあたりの服を握りしめて目を伏せる。

「俺が…凛の前から消えなければ…遙さんと凛がこんなことにはならなかった…」
「それは、朱希が悪いわけじゃないよ」
「…けど…」

写真をもとの場所に戻して真琴さんを見つめる。

「…朱希。朱希が背負うことない。朱希は何も悪くない…」
「本当に、そう思うんすか?」
「え?」

真琴さんをじっと見つめて俺は目を逸らした。

「凛の笑顔を奪ったのは…きっと、俺だ。凛があんな風になったのも…全部…」
「違うよ。凛は…中1の冬、ハルに負けたんだ。帰省した時に偶々会って戦ったんだって。それで、凛は負けた…きっと、それも原因で…朱希が全部悪いわけじゃない」
「…負けた凛の傍に、俺がいればよかったんだ。一緒に、次は勝とうって…そう、言ってやれば…」

俺に告白した凛。
俺はその返事を返していなかった。
その後、凛が遙さんに負けて…
俺は凛の前から姿を消した。

2つのものから、凛は裏切られたんだ。
水泳と、俺と…

違う、もっと前から…俺は…

「…朱希…」
「…すんません。俺、もう帰ります…」

逃げるように真琴さんに背を向けて、玄関に向かう。

改めて、実感した。
自分が、アイツを裏切ったから…
凛の傍から離れたから、こうなったんだ…
俺がアイツから目を背けたから…


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