次の日の早朝。
俺はやっぱり、あのお墓の前にいた。
朝陽が出てくるような、そんな時間から。
昨日のうちに買っておいた花を供えて、お墓の前に座る。
「おはよう」
ただそれだけ言って、墓石に刻まれた名前を見つめていた。
それから少しして、携帯が鳴る。
『もしもし、朱希?おはよう。えっと、寝てたよね?』
「いえ…今、外にいますけど」
『えぇ!!?外!?こんな時間に何して…』
真琴さんの言葉になんて返事をしようかと墓石を見つめる。
「…背中を、押してもらおうかと…」
『誰に?て、そうじゃなかった。ハルがリレー泳いでくれるって』
「そう、なんすか?よかったっすね」
真琴さんの嬉しそうな声に俺は微笑む。
「て、ことは…真琴さん達が泳ぐのを見てから俺の出番か…」
『うん。そういう事になるね。あ、えっと…待ち合わせは会場の前。時間は…』
場所と時間をちゃんと頭の中に入れて電話を切る。
まだ、時間はあるか…
「他の4人がリレー出るんだって。俺は相変わらず1人でだけど…」
風で花が揺れるのを見ながらポツリポツリと言葉を紡ぐ。
「ちゃんと、約束守るから。この傷のことも…話さないといけないかな…」
「凛に、バレちゃうんだよな…ずっと隠してたこと…」
バレたくは、ない。
けど、もう仕方ないんだ。
自分の意志で水泳に戻ったのだから。
それから、いろんなことを話してから立ち上がる。
「さてと、もう時間だ。行ってくるよ」
胸のあたりを撫でて笑う。
「行ってくるよ、よりは一緒に行こう、かもね。…じゃあ、行こうか…兄さん」
墓石に背中を向けて歩き出す。
「一番になって、兄さんのこと絶対に楽しませてやるからな。見てろよ?」
やっぱり、返事はないけど俺は少しだけ軽くなった足で会場へ向かった。
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