スタート台に立った遙さんがこちらを見て凛を見つけたようだった。
少し驚いた顔をした遙さんだったが、目を閉じてゴーグルをつける。

そして、遙さんがプールに飛び込んだ。

1人、また1人と遙さんが前の選手を抜いて行く。
俺と凛の前を通り過ぎたとき、遙さんは先頭を泳いでいた。

真琴さんたちが必死に遙さんの名前を呼ぶ。
ゴールした瞬間に聞こえる歓声と、喜ぶ真琴さんたちの声。

掲示板の岩鳶高校の横には1という数字がはっきりと映し出されていた。

喜んでいる4人を見ていた俺は彼らの背中を向ける。

次は…俺の番か…

体を伸ばしながら建物の中に入って観客席に上がる。

「あ、朱希君!!」
「勝ってよかったな、遙さんたち」
「うんっ!!次、朱希君の番だね」
「そうだな」

鞄を開けて黒いゴーグルを握りしめる。

「あれ?いつものじゃないの?」
「え?あぁ…まぁな。じゃ、そろそろ召集時間だから行くわ」
「うん。頑張ってね!!みんなで地方大会に行こう」

そう言って笑った松岡に俺もほんの少しだけ微笑む。

「そう…だな」
「朱希君?」
「…いってくる」

松岡に背を向けて歩き出した俺は、少し離れてから足を止める。

「伝言頼んでいいか?」
「遙先輩達に?いいけど…」
「…隠してて、ごめんなさい…そう、伝えておいて」
「え?」

松岡の方を見ながらそう言えば、目を丸くして俺を見た。

「それって…どういう意味?」
「じゃあ、行ってくる」
「ちょっと、朱希君!!?」

黒いゴーグルを握りしめて、小さく息を吐く。

「もうすぐだよ、兄さん」

そう呟けば胸の鼓動が少しだけ速くなった。


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