真琴視点

天ちゃん先生に修理のための買い出しの話をした時、怒られていたのは御影君だった。
俺達が不法侵入で怒った時と同じ先生はどこか呆れたように溜息をつく。

「たく、どいつもこいつも…どうしてあのスイミングスクールの廃墟に行きたがるんだ」
廃墟のスイミングスクールって俺達が言った場所?
御影君もあの場所の関係者なのかな…

天ちゃん先生との話を終えて、御影君の後を追う。

「ねぇ、ちょっと待って」

俺の呼びかけに全く反応しない御影君の腕を掴む。

「待って、御影君」
「…なんすか?」

振り返った御影君はほんの少し眉間に皺を寄せる。
何から話せばいいんだろう…

「あ、俺橘真琴。2年生」
「…だから?」
「え?あぁ…えっと…」

一応名前を名乗るが、御影君は興味なさげに俺を見る。
そして、小さく溜息をついて口を開いた。

「松岡江と親しいみたいだったし、凛のことっすか?」
「え?あぁ…まぁ。うん…凛、オーストラリアで何かあったの?」
「さぁ?知りませんけど」

やっぱり、凛に何があったかわからないか…
御影君は少し目を伏せてから俺を見る。

「凛と知り合いなら行っておいてもらえます?」
「え?」
「俺はもう前とは違う。だから…俺のことなんて忘れろ…そう、伝えてください」
「え、ちょっと!!?」

御影君の言葉を頭の中で繰り返して、慌てて腕を掴む。
忘れろって…友達を忘れるなんてできるわけない。

「まだ何か?」
「御影君、友達なんじゃないの!?そんな簡単に忘れろなんて…」
「…離してください。授業に遅れます」

御影君は俺の腕を払って階段を上っていく。
その背中はどこか寂しそうだった。

「本当は、凛と友達でいたいんじゃないかな…」

御影君のことは何も知らないけど、何となくそう思った。

「て、こんなことしてる場合じゃない!!授業行かないと!!」


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