前を歩く真琴さんたちを後ろから眺めながら会場から出ようとしていれば見覚えのある姿を脇の通路で見つけた。
視線が交わって、そいつは目を伏せる。
「真琴さん」
「朱希?どうかした?」
「忘れ物か?」
真琴さんと遙さんが振り返ってこちらを見た。
「忘れ物じゃないっすけど…先に帰って貰っていいっすか?」
「…わかった」
「え、ちょ…ハル!?」
「お疲れ様でした」
何かを察してくれたのか遙さんが真琴さんの手を引いて歩いて行った。
2人に頭を下げて、今通り過ぎた脇の通路に入る。
「凛」
俯いていた凛がビクッと肩を揺らしてこちらを見上げる。
「…朱希…」
「部長とかに、別々で帰ること伝えたのか?」
「あ、あぁ…」
視線を逸らして頷いた凛に背中を向けて歩き出す。
「じゃあ、行くぞ」
「え…?」
「…聞きに来たんだろ?」
驚いている凛を振り返って俺は首を傾げた。
「聞くなって…言わねェのかよ」
「ここまできたら、んなこと言っても意味ねぇだろ。覚悟はしてきた」
「…そう、か」
俺のジャージの裾を掴んで凛がこちらを見た。
「…朱希」
「なんだよ」
「…あんな怪我…オーストラリアではなかったよな…?」
「全部話してやるから、まずは黙ってついて来い」
服の裾を掴んでいた凛の手を掴んで歩き出す。
「朱希!!?」
「…覚悟はしておけよ…俺の話を聞く」
「おう…」
無言のまま電車に乗ってあの場所へ向かう。
「…ここって…墓地?」
手を握ったまま墓地の中に入って、体が憶えてしまったあの墓の前で足を止めた。
「うわっ」
突然止まったからか、止まりきれずに背中に凛がぶつかる。
「突然止まんなよ。つーか…何で墓地になんか…」
凛の手を離してから、横にあるお墓に視線を向けた。
今朝供えた花がふわりと風に揺れる。
「え…」
墓石を見た凛の目が見開かれた。
「ここって…」
「俺の兄さんの墓だ」
凛の方に体を向けてじっと彼の顔を見つめる。
「…だから言っただろ?後悔するって」
「朱希の兄貴が…死んだ?」
「死んだよ。中1の冬…俺が、凛の前から姿を消したあの冬に…兄さんは俺の前から消えた」
目を丸くしている凛。
「…今なら、まだ引き返したっていい。何が起きたか聞かずに…忘れてもいい。どうする?」
「聞くに、決まってんだろ」
「…そっか」
荷物をそこに降ろして、墓石の前に座る。
「中1の冬…俺は凛と一緒に日本に帰国した」
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