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「久々の日本だーっ」
「まさか、凛と一緒に帰国することになるとは思ってなかった」
「いいだろ、折角同じ場所に行くなら一緒が良いじゃんか。朱希は嫌だったのかよ」
拗ねた顔をした凛に別に、と返してゲートをくぐると女の子がすごい勢いで凛に飛びついた。
「お兄ちゃんっ!!」
「江!!?」
「おかえりっ」
キラキラと笑う凛と同じ髪色の女の子に俺は首を傾げる。
「その子誰?」
「何度か話しただろ?俺の妹の江。朱希とは同い年だ」
「へぇ…初めまして、御影朱希です。よろしく」
凛から離れた江ちゃん?はこちらを見て凛とよく似た笑顔で笑った。
「松岡江です。よろしくね、朱希君」
「よろしく」
少し2人と話していれば遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。
「あれ、兄ちゃん?」
「迎えに来たぞー。あ、凛君こんにちは」
「朱希の兄ちゃんだ!!こんにちは」
どこか嬉しそうに笑いながら凛を撫でた兄ちゃんが俺を見る。
「帰るぞ」
「ん、わかった。じゃあ、凛と江ちゃん。またね」
「またオーストラリアでな」
そう言って手を振った凛に笑いながら手を振りかえして兄ちゃんの隣に並ぶ。
「久々だな、会うの」
「兄ちゃん日本の高校だからな。大会でまた1位だったんだろ?」
「個人メドレー1位。しかも、高校新記録」
「マジで!!?スゲェ」
タクシーに乗って家に向かう途中俺はずっと兄ちゃんの話を聞いていた。
「高校って速い奴、沢山いるのか?」
「まぁ、速いけど…俺には勝てねぇよ」
「じゃあ、俺絶対兄ちゃんに勝つ」
そう言って笑えば乱暴に撫でられた頭。
「じゃあ、俺に勝ったら俺のたからばこ見せてやるよ」
「宝箱?なにそれ」
「俺の大事なものが詰まった箱。まだ誰にも見せたことねぇんだ」
「ふぅん…じゃあ、俺が勝って絶対に見せてもらう」
俺の言葉に兄ちゃんは嬉しそうに笑った。
「朱希も1位獲ったんだろ?大会で」
「おうっ!!フリーの1500m」
「よくそんな長距離泳ぐ気になるな」
「楽しいからいいんだよ」
そのまま家に帰ってもっとたくさん水泳の話をするつもりだった。
だけど、そんな未来がやってくることはなかった。
急ブレーキをかけて止まったタクシー。
そして凄い衝撃がきて目の前が真っ暗になった。
鼻につく焦げ臭い臭いに目を開ける。
さっきの衝撃からどれくらい経ったんだろう…
そう思いながら目を動かして異変に気付いた。
視界の端に広がる赤色。
「血…?」
その血の先にはぐったりと横たわる兄ちゃんの姿。
「に、ちゃん…?」
兄ちゃんに駆け寄ろうとして体に激痛が走る。
「痛っ!!?」
そのとき初めて気づいたのだ。
自分の胸や、体を貫通している数本の細い鉄柱に。
「う、そ…だろ…」
体から流れ出る血と体に走る痛み。
この状態で意識があるのが奇跡だと思った。
「に、ちゃん…」
「…朱希…?」
ぐったりとしていた兄ちゃんがゆっくりとした動作でこちらを見た。
「へー、き…?にい、ちゃん」
「…悪ぃ…だ、めかも…」
困ったように笑った兄ちゃんの瞳に紅く揺れるものが見えて、視線だけそちらに向ける。
目の前まで迫って来ていた炎に俺は目を見開く。
「朱希…」
「兄ちゃん、俺…死にたく…ない」
「俺、もだ…けど、朱希が、助かるなら…俺は…死んでも、いい」
「な、に…言って…」
兄ちゃんが伸ばした手の指先が俺の頭を撫でて、ばたっと落ちる。
「兄ちゃん…兄ちゃん!!?」
薄れていく意識の中で必死に兄ちゃんに手を伸ばしたけど、それが届いたかはわからなかった。
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