次に目を覚ました時俺は真っ白な空間の中にいた。

「ここ、は…?」

体を起こせば激痛が走る。
体に巻かれた包帯を見て、あの時の光景を思い出した。

「目が覚めたのね」

看護士さんの言葉に小さく頷いた。
「ねぇ、兄ちゃんは…?兄ちゃんは、どこに…」
「え?あ…お兄さんは…」

目を逸らした看護士さんに心臓が嫌な音を立てた。

「君のお兄さんは…亡くなったわ」
「う、そだ…なんで…」
「けど…君のお兄さんは…そこにいる」

そう言って指差された胸。
また、ドキリと嫌な音を立てた心臓。

「もし、かして…」
「その心臓は…貴方のお兄さんから移植されたものよ」
「…兄ちゃんの、心臓…?」

俺が兄ちゃんを、殺したってこと?
俺が死んでれば…この心臓は今も兄ちゃんの中で…

「なんで、なんで…俺を助けた…なんで、兄ちゃんを助けなかった!!?兄ちゃんさえ生きてれば」
「貴方のお兄さんは助かる状況じゃなかった。救急車の中で意識を取り戻した貴方のお兄さんは…貴方のために必要ならこの体の全てを使ってくれって、そう言って…」
「なんで、だよ…兄ちゃん…」

ボロボロと零れる涙を拭うこともせずに大声で叫ぶ。

「なんでだよっ!!!」

〜〜

「…まぁ、ざっとこんな感じ…」

凛は顔を伏せて、その肩は小さく揺れている。

「…入院して…リハビリして…やっと、昔みたいに動けるようになった時にはもう中3だった」
「俺の…前から…消えたんじゃ、なくて…帰って、来れなかった…のか?」
「まぁ…そういうことになる。」

ボロボロと泣いている凛に俺は苦笑する。

「ご、め…俺…何も知らねェのも…朱希に、朱希に…」
「いいよ、別に。お前を裏切ったのは紛れもない事実だ」

立っている凛の手を引くとカクンと膝が折れて俺の方に倒れてくる。
それを抱きとめて、背中を撫でた。

「何で凛が泣くんだよ」
「…しょうが、ねぇだろ…止まんねぇんだから」

肩を濡らしていく凛の涙に俺は唇を噛む。

「俺が…朱希と日本に帰りたいなんて…言わなければ…」
「それは違う。そんな言葉を…聞きたかったわけじゃない。だから…言わないでくれ…頼むから…」
「ごめっ…」

俺も泣きそうだ…
ぎゅっと凛の体を抱きしめて肩に顔を埋める。
カタカタと震えだした自分の体。

やっぱり、思い出すのはつらい…

「朱希…震えて、る…のか」
「悪い…すぐに止めるから…だから、もう少し…だけ」

俺の墓の前で何してんだって兄さんに呆れられそうだ。
けど、体の震えも、凛の涙もそう簡単に止まりはしなかった。


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