目を真っ赤にした凛に俺は苦笑する。

「目、真っ赤だけど…お前それで帰れんのか?」
「うるせぇ…」

お互いに涙と震えが止まった頃にはすっかり、辺りは暗くなってしまっていた。

「似鳥に笑われるんじゃねェの?」

クスクスと笑えば頭を叩かれた。

「痛い」
「お前が余計なこと言うからだろ」
「事実だから仕方ねぇだろ?で、どーすんの?その目冷やしてから帰るか?」

俺の問いかけに凛は首を傾げた。

「どこで冷やすんだよ」
「あー…俺の家、来るか?まぁ、そんなに遠くはねぇし。別に泊まっていってもいいけど」

凛は少し考える素振りをして小さな声で行くと呟いた。

「…ハル達は、知ってんのか?お前の兄貴のこと」
「いや、知らないよ。真琴さんに話したくなったら話してほしいって言われた」
「そう、か…何で、俺には…話したんだよ」
「話さないといけないと思った。…俺がお前を裏切って…」

あの笑顔を奪ってしまったから。

ガチャと鍵を開けて部屋に入る。
「鍵閉めろよ」
「あ、あぁ…」

電気をつけて部屋に入ると後ろから恐る恐るついてくる凛。

「なんもねぇって」
「いや…来るとは、思ってなかったから…」
「俺も呼ぶとは思ってなかったよ。ソファに座ってろ。タオル持ってくる」

鞄をおろして保冷剤をタオルで巻いて凛に渡す。

「サンキュ…」
「どういたしまして」

凛の隣に座って目を冷やす凛に視線を向ける。
まさか、泣くとは思ってなかった…

「なぁ…朱希」
「あ?」
「…賞状とか…どうしたんだ?」

オーストラリアでたくさん獲った賞状や、メダルやトロフィー。
それを思い出して苦笑する。

「捨てた、全部」
「そ、か…」
「水泳…やるつもりなかったから」

なんだかんだ、こんなとこまで来ちゃったけどな…

「朱希が…フリーの1500m泳がなかったのは…兄貴より速くなるって約束守るためか?」
「え?」

凛の言葉に体がビクッと震えた。

「朱希?」
「あ、あぁ…そう。兄さんとの約束がね…」

あぁ、やっぱりだめだ…
俺はお前に嘘を吐く。

「ごめんな」
「朱希?」
「いや、なんでもない。目、ちょっと見せてみ」

タオルを離した凛の目を見て苦笑する。
「ダメだな。真っ赤」
「…近ェんだけど」
「…何、恥ずかしいの?俺は凛と違って不意打ちで何かしたりはしないから安心しろ」

俺の言葉に凛が目を見開いて顔を紅く染める。

「あ、あれは…えっと…」
「顔真っ赤。俺ちょっと着替えるから顔も目も冷やせよ」

頭をぐしゃぐしゃとなでれば俯いて目を冷やし始める。
けど、真っ赤に染まった耳が見えた俺は小さく笑った。


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