ジャージを脱いで適当にシャツを出して羽織る。
「そーいや…どーすんの?帰れるか?」
「あー…どうすっかなぁ…折角…」
「折角?」
言葉が止まった凛の方を振り返ろうとすればコツンと背中に何かが触れた。
「…凛?」
「折角お前といるんだ。もう…朱希が俺に会いたくなくなる理由も…俺が朱希を忘れる必要も…ねぇんだよな…?昔みたいに…朱希の隣に…」
「お前…本当に馬鹿だな…」
凛に伝えることを躊躇ったのは、凛が自分のせいでって思って欲しくなかったからだった。
予想通り凛はそう考えてはいたけど、背負うことはなさそうだ。
もう、昔のように凛の傍にいても…いいのか?
まだ、嘘を吐き続ける俺が…
笑顔を奪った俺が…
お前を見捨てた俺が…凛の隣に…
「ダメ、か…?」
「…いや、ダメじゃない…けど…」
振り返って凛と視線を合わせる。
潤んだ瞳に自分の姿が映った。
「朱希…」
「悪かった、凛…お前の傍にいられなくて…お前を悲しませて…お前に嘘を吐き続けて…ごめん」
「…もう、謝るな…お前が、いるなら…俺はそれでいい」
俺に抱き着いた凛の頭を撫でながら心の中でもう1度謝罪の言葉を吐き出す。
ごめん…俺は嘘を吐き続ける…お前に…
「ごめんな…凛」
涙が自分の服に染みこんでくる。
「朱希…今日…泊まって、いいか…」
「その顔じゃ帰れねぇだろ、どうせ」
「…悪い」
俺から離れた凛がフラフラとソファに座る。
「似鳥に連絡、入れておいたらどうだ?寮だろ?」
「ん…わかった」
凛の掠れた声に、何か飲み物をと思って冷蔵庫を開ける。
「なぁ…凛…お前さ…」
「なんだよ…」
「遙さんたちの試合…どうだった?」
俺の言葉に凛が黙り込む。
「哀しそうな顔…してたろ…お前」
「んな顔…してねぇよ」
「…そうか?まぁ…ならいいけど」
冷えたスポドリの缶を凛に放り投げる。
「悪い…」
「凛はさ…本当は一緒にいたいんじゃねェの?遙さんたちと」
「は?」
缶を開けて喉を潤してから凛の方を見る。
「どんな理由をつけても…凛は遙さんと泳ぎたかったんだろ?遙さんとの繋がりが…」
「違う!!俺は前に進むためにっ!!」
「だったら…どうして、お前は…前に進めたって顔をしてなかったんだよ」
「それは…つーか、お前の話のあとにそんな顔してられると思うか!!?」
確かにそうだ。
けど、凛は俺が泳ぐ前から…俺の背中の傷を見る前から暗い顔をしていた。
あの時は無視してしまったあの表情を、俺が目を逸らした凛の姿を…
今度こそ、目を逸らさないで手を差し伸べようと思ったのに…
今度はお前が…俺に背を向けるのか。
「悪い、俺の気のせいみてぇだわ」
「…おう」
凛の隣に座って背もたれに体を預ける。
「……夕飯、何食う?」
「なんでもいい」
「…目の腫れ引いたら外にでも食いに行くかー…」
なんか、今日はスゲェ疲れたな…
頭がぼんやりとしてくる。
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