「おい、凛…朝だぞ」
「ん…朱希…?」
「俺だよ。つーか、起きろ」
呆れ顔の朱希が俺を見下ろしていてゆっくりと体を起こす。
「もう朝だぞ」
「あ、あぁ…」
そういや…昨日は朱希の家に…
「朱希…」
「ん?なに?」
「…はよ」
目を擦りながら言えば朱希は目をも丸くしてから笑う。
「おはよう。顔洗ってこいよ」
「ん…」
昨日朱希と、仲直りをした。
でも、心が晴れないのはきっと…朱希の過去が俺の思っていたよりも重かったからだろう。
それから…ハル達のこと…
顔を洗って鏡に映る自分を見つめる。
「朱希には…どうせ、すぐにバレるんだろうな…」
こんな情けねェ顔してたら…
どうかした?って俺の頭を撫でるんだろう。
乱暴に自分の髪をかき乱してリビングに戻る。
「朝飯、こんなんで悪いな」
テーブルに並べられたトーストとスクランブルエッグ、ウインナーそれからサラダ。
「いや…全然…いいけど」
「そう?ならよかった」
ソファに座ってコーヒーを飲んでいる朱希の隣に座って朝食を食べ始めてふと気づいて手を止める。
「…食わねェのか?」
「いつも食べないよ」
「…体に悪いだろ」
「んー…食べれないんだよなぁ…」
苦笑しながらいう朱希にウインナーを一口大にしてフォークに刺して向ける。
「一口くらいは…食え」
「まさか、凛があーんってしてくれるとは思わなかったよ」
「なっ!!?違ぇよ!!」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
パクッと食べた朱希はどこか楽しげに目を細めた。
「顔、赤ぇけど」
「黙れ」
「本当に初心だな…お前」
朝食を食べ終えてコーヒーを飲みながらテレビを眺める。
「何時ごろ帰る?」
「…適当」
「送る。兄さんのところにも行きたいし」
朱希は俺の頭を撫でて俺の名前を呼んだ。
「…お前は、悪くないからな」
「え?」
「兄さんのこと。お前は悪くない。それだけは…わかっててくれ。俺はお前に背負わせたいわけじゃない」
な?と俺の顔を覗きこんで微笑んだ朱希に俺は目を瞬かせる。
なんで、コイツは俺の考えてることなんでも分かってんだよ…
「ズルい」
「は?」
「お前は…ズルイ」
分からないと言う顔をする朱希に抱き着いて目を閉じる。
「…凛?」
どうして…こいつは俺の欲しい言葉をこうも簡単に吐き出すんだ。
朱希の一言でこんなにも心が軽くなるのはどうしてだろう。
「…凛がさ、何について悩んでるかはわからないけど…」
子供をあやすように背中を撫でる朱希の手。
「凛が後悔しない道を選べばいい。…自分の気持ちに正直にやればいい」
「そんなに、簡単じゃねェ」
「踏み出すのは、簡単じゃねェけどさ…踏み出しちゃえば簡単なもんだよ」
朱希はそう言って俺の髪を乱暴に撫でた。
「…おう。サンキュ…」
「どーいたしまして。あぁ、そうだ…」
「あ?」
朱希の方を見上げれば涙袋の辺りを朱希の親指がなぞる。
「もう…腫れてねぇな」
「え?」
「お前の泣き顔は…やっぱり好きじゃねェな」
朱希はそう言って困ったように笑う。
「朱希…?」
「いや、なんでもねぇよ」
少しだけ。いつもの朱希と違う…気がしたけど気のせいか?
一瞬感じた違和感はすぐに消えて、お昼前に家を出た。
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