あの日持ち帰った缶を俺は開けられずにいた。
理由はわからない。
ただ、開ける勇気が俺にはなかった。

昼休みの屋上で壁に寄りかかりながら空を見つめる。

「何をしまい込んだんだ?…あの、宝箱に…」
「ハルー」

横にあったドアがガチャと開いて、聞き覚えのある声が聞こえる。

「あれ、いない…。あ、御影君?」
「…どうも」

お弁当箱を片手に持つ橘さんに小さく頭を下げる。

「ハル見てない?」
「誰?」
「あ―…知らないか…」

橘さんは困ったように笑う。

「あぁ、けど…少し前にここに来た人ならあそこに」
桜に囲まれたプールを指差すと橘さんは少し驚いた顔をしてから微笑んだ。

「ハル…」

きっと、大切な人なんだろうな…
俺は橘さんから視線を逸らす。

「ありがとね、御影君」
「…俺は何もしてないっすけど」
「いや、教えてくれたから。じゃあ、また」

ニコニコと人のいい笑顔を残して、橘さんは屋上から出ていく。

「また…会うのか?」

少しして、プールに橘さんが現れた。
「プールか…」

もしかして、この間言ってた修理ってプールのことなのか?
て、ことは…彼らは水泳部…

「俺には関係ないか…」

ゴミを袋に詰めて立ち上がる。


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