ピザ屋の人、笹部さんがコーチに来るようになった。
プールに響く怒号。
リレーの方を重点的に教えてるから俺にはその怒号を向けられることはないけど…
どうにも上手くいかないらしく笹部さんが持ってきたカメラ。
3台のカメラが泳いでる姿を映し、どの角度からでもフォームのチェックが出来るようになった。
だが、誰かが泳いでいるときに他の人が泳ぐわけにはいかない。
プールサイドに上がった俺はストレッチをしてから部室に戻った。
「あの、朱希君」
「ん、どしたー?怜」
部室で休憩していた俺の元に来た怜。
どこか浮かない表情をしている。
「あの…なんていうか…」
「彼らの空気が少し変わった?」
「え?」
水着の上半身の部分だけ脱いだ俺は濡れた髪を拭きながら怜を見た。
「なんか、気に入らねェんだろ?」
「…はい。よく、わかりましたね」
「まぁな…」
タオルを首からかけて、ベンチに座る。
「笹部さんの特訓でどんどん上手くなってはいるんだけどなぁ」
「僕の好きだった遙先輩の泳ぎじゃない」
「んー…て、言われてもなぁ…4人でチームなわけだろ?お前が思ってること全部ぶつけてみたらいんじゃね?」
俺の言葉に怜は俯いた。
「俺はそういうチームでのギクシャクとか嫌いでリレーはやらねェんだよ」
「そうだったんですか…」
「だけどさ、怜はリレーやりてぇんだろ?だったらチームのギクシャクはチームで解決しねぇと」
頑張れよ、と怜の頭を撫でてから部室を出ようとすれば聞こえてきたバイブ音。
「俺の携帯だ…」
ロッカーを開けて鞄の中から携帯を出す。
映された名前に首を傾げた。
「ちょっと、電話出るから。怜は戻ってろよ」
「わかりました」
部室から出ていくのを見送って電話を耳に当てる。
「もしもし、朱希です」
『あ、朱希?アンナでーす』
「わかってるよ、どうしたんです?」
『あの雑誌見た?』
彼女の言葉にすぐに俺が見ていた雑誌を思い出した。
「見つからない天才スイマーのやつ?」
『そう、それよ。まさか記事になるとは思ってなくて…平気?バレてない?』
「平気ですよ。疑われましたけど俺はここで長距離やってないんで」
『そう。心配だったんだけど平気そうでよかったわ』
て、あれ?
あの雑誌は日本の雑誌だよな?
なんで、アンナさんが…
「もしかして、まだ日本にいます?あの雑誌、日本のですよね」
『あ、バレた?』
「やっぱり…何かあったんですか?」
『そろそろ定期健診の時期でしょ?だから…』
そういえば、そんな時期だ。
すっかり忘れていた。
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