とある休日。
俺達は笹部さんの家に来ていた。
「「「「「お邪魔しまーす」」」」」
「おう、よく来たな」
「…何で、俺まで…」
ランニングに行こうとウェアに着替えた俺を強制連行した渚と真琴さん。
遙さんは悪い、と一言言って俺を連行した。
笹部さんの家に入って感じた熱気。
うん、嫌な予感しかしない。
「何故この真夏に鍋を…」
部屋の中で沸々と煮えている鍋に溜息をつく。
「松岡、俺が運ぶ」
「あ、ありがと」
飲み物とコップを持った松岡からそれを奪って部屋に入る。
「俺特製のタンパク質とミネラルたっぷりの笹部鍋だ」
うん、暑い。
「鍋するならせめてエアコンを…」
「んなもん、ねぇよ」
「やっぱりやめにしませんか…」
「なに言ってんだ。絶対うまいからさぁ、食え」
皆渋々お皿を受け取る。
皿に入れられた山盛りのそれに俺は溜息をついた。
これ…食えるかな…
「ホント、おいしい…」
一口食べた天方先生の言葉にみんなが食べ始める。
「あ、これトマト鍋だ…」
「そう言えば笹部さんってうちの水泳部のOBなんですよね?」
「あぁ、はい。しかも最後の水泳部員で」
そんな彼らの話を聞きながら俺は縁側に腰掛けてゆっくり皿の中のものを食べていく。
笹部さんが渚の皿にイカメシをいれようとしたときそれが鍋の中に落ちる。
しぶきが飛んだらしく後ろに倒れた渚が机にぶつかって何かが倒れた。
「なにこれ…」
「何年も前の雑誌のバックナンバー」
散らばった雑誌の片づけを天方先生が手伝っているのを見ながら俺は首を傾げる。
あの表紙に映ってるの…天方先生?
「笹部コーチひょっとしてこういうの捨てられないタイプですか?」
「はい、笹部さん」
雑誌を差し出す天方先生と雑誌のグラビアを見比べた笹部さんが目を見開く。
「ま、まりんちゃ…「あっ!!?カニが燃えてますカニ!!」」
顔を真っ青にして慌てている天方先生に苦笑する。
先生って元グラドルかよ…
「朱希、全然食べてないでしょ。ホラ、皿ちょうだい」
そう言ってこちらに手を伸ばす真琴さん。
「俺はもうお腹いっぱいで…」
「え、朱希ちゃんもう食べないの!?おいしいよ?」
「まだ全然食べてないだろ」
「食べなきゃ体に悪いですよ」
4人の視線がこちらに突き刺さり、視線を逸らす。
「いや…」
「朱希君のおかわり、私がよそったんですよ」
「え、江ちゃんが?」
「結構食べてたからもうお腹いっぱいなんだと思います」
ね?とこちらを見た松岡にああと答えて笑う。
飲み物取ってきます、と席を立って台所に行けば後ろから松岡がついてきた。
「助かった」
「皆には話してないんでしょ?」
「あぁ。話すに話せないっつーか…小分けにするよりは全部一気に話した方が楽かなって」
手元の麦茶のペットボトルを見ながら苦笑する。
「松岡は静かに話聞いてくれるけどあの人たちは違うだろ?一気に全部話した方が俺も楽だし」
「そっか。けどそのためにはお兄ちゃんが必要なんだよね…」
「そうなんだよなー…」
凛と遙さんたちの関係が戻らない限り話せそうにないな。
「あー…暑い…」
「汗かいてないじゃん」
「それでも暑いんだよ」
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