鍋パはお開きとなりあたりは暗くなっていた。

「じゃあ、今日はこの辺で解散かな」
「そうだね」

ぞろぞろと笹部さんの家から出て、空を見上げる。
暗いなぁ…
けどノルマ終わってないし…

「江ちゃん、方向逆だっけ?」
「あぁはい」

帰ろうとしていた真琴さんが松岡に問いかける。

「1人じゃ危ないよね。けど、天ちゃん先生急用で帰っちゃったし…」
「俺、送っていく」
「え、朱希が?」

驚いている真琴さん。
「元々走りに行こうとしてたんで…松岡の家から俺の家まで走ればノルマ終わるし」
「あ、そういえば途中で無理矢理連行したもんね」
「そういうことっす。松岡は、それでいいか?」
「あ、うん。ありがと」


じゃあ、また明日と真琴さんたちと別れて海沿いの道を歩きだした。
一瞬見えた怜の浮かない顔。
きっと、あちらに俺はいない方が良い。

「朱希君が送ってくれるとは思ってなかった」
「ん?そうか?」


海風が俺の髪を揺らす。

「凛の大事な妹、何かあったら俺殺されそうだし」
「え、そんな理由!?」
「それもある。けど、ただ心配だっただけだよ」

笑いながら言えば松岡も笑う。

「朱希君ってお兄ちゃんのことどう思ってるの?」
「え?」
「関係ないなんて、もう言わないでしょ?」

俺を見上げる松岡に苦笑する。

「さすがにもうそれは言わねぇよ。凛のことなぁ…」
「お兄ちゃんは、朱希君のこと好きだよ。きっと」
「は?」

好きって…
なに、言って…
慌てて松岡の方を見れば松岡は足を止めて笑いながら俺を見た。

「直接お兄ちゃんに聞いたわけじゃないの。けどお兄ちゃんは朱希君のこと…その恋愛的な意味で好きだと思うの」
「いや、それは……」
「最初、気づいたときはびっくりしたし…お兄ちゃんの顔見れなくなったりとかしたんだけどね…けど、お兄ちゃんね…朱希君のこと話してるとき凄く楽しそうに笑うんだよ」

何も言えなくなった俺を無視して、松岡は言葉を続ける。

「遙先輩のこととかメールで送っても返信しないくせに、朱希君のことになるとすぐに返信来るし。珍しくお兄ちゃんから電話きたと思ったら朱希君の話ばっかりで…」
「松岡…」
「私ね、笑ってるお兄ちゃんが好きなの。だからお兄ちゃんが朱希君といて笑えるなら…たとえ普通じゃない恋だとしても応援したい」

笑いながら言った松岡。
なぁ、凛…お前の妹…すげぇぞ?
普通、自分の兄貴が男が好きだって知ったら笑って応援するなんて言えねェと思う。

「強いな、松岡って」
「え?」
「凛も…それくらい強くなりゃいいのにな。アイツはすぐに泣く」
「私の前では絶対に泣かないよ」

松岡に向き合って俺は笑う。


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