彼らの手に握られた花火を見ながら苦笑する。

「俺は花火、苦手で…」
「あれ、朱希って珍しいね。アイスも花火も苦手なの?」

目を丸くする真琴さんから視線を逸らす。
花火も、兄さんとの思い出が多すぎる。
きっと、また体が震えだすに決まってる。
花火をしている彼らを見てるだけで結構ヤバい。

「苦手、ですね」
「朱希は夏を楽しめないな」
「…プールがあればいいんすよ」
「…それもそうだな」

俺と遙さんのやり取りを見て真琴さんが笑う。
「変なところ似てる?」
「そんなことはないかと…」

あれ、そういえば…松岡がいない。

「あー、笹部コーチなんですかこれ!!」
「何々、どうしたの?」
「何か見つけたのか?」

部屋の奥から出てきた松岡の手にはアルバム。
「スイミングクラブのアルバム」
「おー、懐かしい!!」

写真の中には楽しげに笑う凛がいた。
出会ったころとそう変わらない笑顔。
それを見ないように彼らから離れた。

俺と同じように少し離れたところから彼らを見ている怜。
悔しそうな、悲しそうなそんな何とも言えない表情の怜。

「仲間って大変だな…」


写真を見ている彼らを遠くから見ながらふと気づく。

「あの、笹部さん」
「どうした?」
「15年くらい前のもあるんすか?」
「おぉ、あるぞ。見たいのか?」

はい、と言えばちょっと待ってろと言って少し色あせたアルバムを持ってきた。

「これが15、6年前のだ」
「ありがとうございます」

部屋の中の壁にもたれ掛ってページを捲る。
古い写真の中に見覚えのある姿を見つけて手を止めた。

「いた…」

友達と笑う兄さんの姿を見つけてページを捲る。
1位と書かれた賞状を母さんに見せている写真があった。
母さんの腕の中に幼い頃の自分がいて俺はそれを指先で撫でる。

「…本当に、ここにいたんだ…」

笹部さんが後ろから写真を覗き込む。

「これ…久瑠橋か?」
「…覚えてるんすか?」
「あぁ。よく大会にでてたなぁ…途中でオーストラリアに引っ越したが…高校では日本に居たっけか」

写真の中で笑う幼い兄さんに俺は目を細める。

「知り合いか?」
「はい。俺の…憧れの人っす」
「そうか。今どうしてんだろうなぁ…祐希のやつ…」
「そうっすね…」

ここにも、兄さんを覚えている人がいた。
兄さんが本当にここにいた証拠があったんだ。

「あの、笹部さん」
「どうした?」
「この写真…貰ってもいいっすか?」

母さんと兄さんと俺が映る写真を指差すと目を瞬かせた。
「別に構わねェけど…」
「ありがとうございます」

色あせた写真を見ながら俺は微笑む。

「そういや、お前…久瑠橋に似てるな」
「え?」
「横顔とか…そっくりだな」

笑いながら言った笹部さんに俺も笑った。

「ありがとうございます」


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