「朱希君は…」
「ん?」
「お兄ちゃんを守りたいの?」
松岡の言葉に笑えば松岡は目を伏せた。
「それは、優しさじゃないよ」
「え?」
「お兄ちゃんは守られたいわけじゃない。…お兄ちゃんを傷つけたくないなら…ちゃんと向き合ってよ」
ね?と笑った松岡。
「きっと、お兄ちゃんは…傷つけられたとか思ってないと思うよ。朱希君がそうやって逃げることの方がお兄ちゃんは悲しいと思う。だから…もう、逃げないで」
「…本当に、お前スゲェな…そこまで言われたらもうなんも言い返せねぇわ」
苦笑して松岡の方を向く。
「俺はさ、これ以上大切なものを失いたくない。凛のことも、失うつもりはない」
「朱希君…」
「だから、ごめん」
松岡が悲しそうに目を伏せる。
「あー、いやそういう謝罪じゃなくて…」
「え?」
「お前の兄貴、貰うな」
笑ってそう言えば松岡は目を瞬かせてから嬉しそうに笑った。
「たまには返してよね」
「わかってるよ」
止めていた足を動かして松岡の家まで並んで歩く。
「お兄ちゃん、きっと喜ぶよ。朱希君が好きだって言ったら」
「どうだろうな…案外、断られるかもしれねぇぞ?」
「それはないよ」
松岡は嬉しそうに笑う。
「松岡の自信はどこから来るんだよ。今、凛が俺を好きだとは限らねぇだろ?」
「好きだよ、きっと」
自信ありげに言った松岡。
「そうだといいな」
「うん。朱希君とこんな話、するとは思わなかったなー」
「松岡が始めたんだろ?」
「そうだけど…色々聞けて楽しかった」
松岡の家についたらしく、足を止める。
「ねぇ、そろそろさ…江って呼んでよ」
「…コウじゃねぇの?」
「どっちでもいいよ。朱希君なら」
「あっそ。じゃあ、ゆっくり休めよコウ」
ありがとね、と手を振るコウに手を振りかえして走り出す。
やっと、本当に凛と向き合えそうだ。
軽くなった足取りで俺は家まで走った。
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