HEARTBEAT SCREAM
NO.000:プロローグ

私は少年に抱えられていた。
訳も分からぬままただ赤い空に立ち昇る黒く濁った煙を眺めながら。
私を抱えて走った少年は、人目につかない小道で立ち止まった。
喧騒を少し遠くに聞きながら、少年は荒い息のまま壁伝いにずるずるとうずくまる。

閑静な住宅街にはそぐわない怒号が飛び交う。
あちこちで轟々と火の粉が舞い上がっていた。
辺りに鳴り響くサイレンがやけに大きく感じる。

少年は静かに泣いていた。
まるで自身の非力さを悔い呪うように。
声を殺し肩を震わせながら、私を抱き締める腕に力を込めて。


僕のヒーローアカデミア
─ HEARTBEAT SCREAM ─


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