零れ落ちる (2/3)
それから一週間と経たないうち。
「……桑折……?」
奇跡的に、俺は桑折と再会した。
再会、と言ってももちろんあいつが生き返ったわけじゃない。
死んだあいつと、だ。
「黒崎、」
桑折は少し目を大きくして、驚いてみせた。
それもそうだろう。
普通の人間が見えるはずのない自分に、クラスメイトが声をかけてきたのだから。
つまりはそう、俺は普通じゃない。
小さい頃から、幽霊というものが生きている人間のように、鮮明に見えていた。
そして今俺の目の前にいる桑折も、普通の人間には見ることが出来ないわけだ。
「……何してんの、」
「別に、何でもいいだろ。」
素っ気ない会話。
死に別れたクラスメイトとの再会だというのに、感動の欠片もない。
「……驚かねーんだな、あんまり。」
「驚いてるよ、一応。」
桑折の胸元に繋がる鎖を見つめながら、俺は言った。
この鎖が、死者の証。
これにどういう意味があるのかは分からないけれど、俺の知ってる幽霊というものは、みんな胸に鎖が繋がってる。
「やっぱり見えてたんだね。」
「……知ってたのか?」
「何となく、そうじゃないかって思ってた。あたしも同じだったから。」
さらり、と告げられた言葉に、俺は驚いた。
「いつから、」
「最近。中学入学してから少しずつ。」
俺は生まれつき見えていたから分からない。
けれど、段々見えてくるようになるやつもいるんだなと思う。
「見えるやつなんか、そうそう出会えねーと思ってた。」
「意外と近くにいたでしょ。」
桑折はそう言って俺に笑みを向けた。
そんな姿を見てると、ますます死んだ人間だなんて信じられなくなる。