君の好みは胸下ぐらいのロングヘア。
私はショートカット
なのに君は結んだ髪が少しだけ出てるのは可愛いね、って笑うんだ。
「おっはよー名前!」
「おはよ、キヨ」
「今日の星占いもラッキーだったよ」
「どうせ恋愛運でも良かったんでしょ?」
まだ覚めない目を擦りながら、いつもと変わらない会話をした。
「いや名前は凄いなぁ!そんなこと分かっちゃうなんて」
「何年キヨと一緒にいると思ってんのさ?」
「んーもう10年以上かなぁ?」
「14年だよ、長いねぇ…っと」
向こうに見えたのは栗色の髪を靡かせるキヨの彼女。こっちに気付かずどんどん歩いて行ってる。
「どうしたの?あ!#name3#ちゃん!」
「うわー鼻の下のびてんじゃん…さっさといってきな」
「ごめん、名前」
そう言いながら走っていったキヨに気にすんなーって叫んで私は苦笑いをこぼした。
何が気にすんな、だ。嫌で嫌で仕方ないくせに。
◇ ◇ ◇
キヨと私は所謂幼なじみでずっと一緒に育ってきた。そんなキヨにこんな気持ちを抱き始めたのは何時だったか。あまりに自然な事で気付きもしなかった
だけど。
彼が中学に入って初めて彼女を作った時、胸が痛くて痛くて。真面目に病院に行こうかと思ったぐらい。
勿論あのキヨだからそれまでに女の子と良くデートしたりしてたけど、それでも一番側にいたのは私だったんだ。朝一緒に行くのも、学校の休み時間も、キヨ部活が終わるの待って一緒に帰るのも、休みにお互いの家に行くのも。
でも彼女が出来てそれが全部私じゃなくて彼女の特権になった。
もし彼が1人の子とずっと付き合ってるのなら私はキヨを諦められたかも知れない。
けど違う。
キヨはああ見えて好きになった子には一途で浮気なんてしない。でもそうとは知らない彼女達は重いって彼と別れる。つまりキヨなら浮気しても怒んないでしょ、ってノリなんだ。
あぁあいつらぶっ飛ばしてやりたい。
振られる度キヨは私に泣きそうな顔で別れた、と伝えてくる。私はその度私にしたらって言葉を飲み込んで励ます。
キヨは私が振り向いて、と願いながら彼の背中をさすってるのを、知らない。
◇ ◇ ◇
窓の外を見ると仲良く手を繋いで帰るキヨとその彼女。
「痛い…」
ズキズキする胸を握り締める。
窓から入った風が下ろしたままの私の短い髪を揺らした。