月曜日に生まれた
ソロモン・グランディ


それは私が拾った人のことなのでした。



◇ ◇ ◇



「疲れたー…」

そう呟く私の周りには誰も居ない。
ただ電灯がぽつぽつと真っ暗な道を照らしている。
私は何時も通りバイトをして、閉店間近のスーパーで買い物をして、今は家に帰る途中だ。
家がすぐ近くの角を曲がって、ポケットの鍵に手をつけた。
そこで前を向いた私の目に飛び込んできたのは、倒れている人。
サァと血の気が引いて、私はその人に駆け寄った。

「ちょ、大丈夫ですか!?もしもし?もしもし?」

近くで見て、男だと分かった彼に声をかけても揺すっても一向に動かない。息もちゃんとしているし心臓もちゃんと動いてる。苦しそうな様子もない。
この辺はあまり治安も良くないし、身なりの良さそうな彼をこのまま放置したらやばいな、なんて疲れた頭で考えて、彼の腕を首に回し、小さなアパートの階段を上った。
よく考えたらあの時、救急車を呼べば良かったのにと大分たってから気がついた。
でももしそうしていたら、私と彼は出会っていなかっただろう、絶対に。



◇ ◇ ◇



「よいしょ、っと」

背負った彼を一旦床に降ろし、お客さん用の布団を敷いてその上に乗せた。
明るい中でその姿見ても特に外傷もなさそうで、なんで気を失っているのかわからない。

「どうしよっかな…」

とりあえずネクタイを緩めてあげて、おでこに冷えピタをし、私はお風呂に入った。
上がってきても一寸も動いた跡がない彼を見て、そう呟いてしまった。
にしても凄くかっこいい子だなぁ。てかこの制服氷帝だよね……。
前髪をあげた彼の顔はそれはもう端正だった。それにこの制服はあの金持ち学校、氷帝学園の制服だ。
こんなボロアパートで公立の高校に通い、ギリギリの生活をしている私とは縁のない人だ、と感じる。
なんだか自分で考えて虚しくなって来たとき、ん、という声で現実に引き戻された。
ゆっくりと起きあがった彼は私を見てこう言った。

「お前は、誰だ?ここは、どこだ?……俺は、誰だ?」





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