【雑記集】ネロのこと/フィガロのこと

2023/12/10

ネロのこと

ネロの世界観ってものすごく狭いように感じる。
きっと本当になんの希望もない生まれだったんだろうな。
北じゃなかったらブラッドリー以外の光にも出会えたかもしれないけど、他に触れないまま、彼以上の光に出会えないまま、400年あまりそれだけを希望に生きてきたから、ネロの世界には光がひとつしかないんだ。
もうさ、たぶん、ネロの世界ってブラッドリーに初めて会った時か拾われた時から止まってるよ。
ネロの世界にある光は太陽オンリーだから、その輝きが失われたら一面闇で生きられない。
だからその光の下で死にたい。
ネロ……世界は広いよ…
それを見せてくれたのはブラッドリーじゃないのかい。





ネロやシノって生まれがああだから、おそらく自分でも認識できる自我がちゃんとできる前にまず自分の身を守る考え方ができていて、判断基準は無意識に自分の身を守るためになってるところがあると思う。

自分にとって1番大切なボスやヒースの為の自分であることは、自分を守ることに1番繋がるから、最優先。
でもそれが自分の為にならないとなったら裏切りだってできるし、それこそオズだって、もしかしたら賢者だってやれる。
そんな気がする。

ただその行動と考え方に善し悪しはなくて、生まれの環境による性だと思う。
それでふたりは生き延びたんだし、そうでないと生きられない所ではそれが生きる術。

そうなった時にネロが躊躇するのはネロの甘さで、シノが躊躇しないのはシノの芯の強さかな。
ボスだけが頼りだったネロと違って、シノはブランシェット家でヒース以外の優しい人とも関わっていた上でヒースを選ぶという過程があるから、そこの違いがふたりの芯の強さの違いだと思ってる。

ネロ、偶然ブラッドリーに拾われて、他に頼る先なんてあるわけないもんな。
選択肢がそもそもない。
弱いただの魔法使いのガキが北の大地で生き延びるためにそれ以上の選択なんてないでしょ。
シノと違ってそこを自分で選んだ、自分でそこに辿り着いたっていう過程がない分、いっそ酷なほどに運命的で、ある種の呪縛や呪いとすら取れる。





ブラッドだけを優先するネロの言動、じっくり考えるとやっぱりおかしくはない。
敬愛する親代わりの兄と絶縁したあと、絶縁した原因も解決できる上にまた兄と少しの間昔のように暮らせるって考えたら、私だってしっぽ振って兄のこと兄のためで頭がいっぱいになる。
その時のクラスメイトなんて知ったことじゃない。

思っている以上にネロは誰もに優しくて、ただ私がそれを特別な優しさだと勘違いしていただけだったりして。
もちろんお客さんに対してよりは情があるだろうけど、店主としてお客さんに気を遣ったり子供にサービスしたりするのと同じように子供たちにも優しかったのかもな。
心の外の人に変わりはない。
ネロって、もう二度と会わないだろうっていう人間や村にも優しくできる男だからなあ。





フィガロのこと

「ミチルを産むな」「アーサーを石にしよう」
と伝えながらも強行突破しなかったフィガロ。
予言して双子が何もしないのは双子の根本にある2人で全てが足りてるから他人はどうでもいいという考えだけど、世界の管理者としてはどっちも危険要素でしかない。
でもチレッタにもオズにも情があるんだよな。
一瞬で消え去る儚い命にも慈愛を抱く人なんだよ。

フィガロ、誰かを犠牲に多くの良い未来を守ることという選択を一瞬でできてしまう所、あまりに世界の管理者に向いていて、
その残酷さに自分で傷ついて個人に対して
「どうしようもないんだごめん」
と謝ってしまう所、あまりに世界の管理者に向いていない。

フィガロの
「どうしようもないんだごめん」は、
その選択がどうしようもないことに対する謝罪じゃなくて、俺が君のことをどうしても救えないことに対する謝罪なんだよな。
管理役の謝罪は、普通、前者だよ。

フィガロってどれだけ自分がピンチでも愛する誰かがピンチでも効率的に客観的に冷静にいくつものことを考えられてしまう人だから、心配や不安だけで心をいっぱいにできない。
かわいそうなくらいに神さま。
賢すぎるんだよ、この人。

その点、ネロやファウストはある意味 “単純一直線ばか” だから、一度どつぼにハマるとずっとそれしか考えられなくなるし、心をそれだけでいっぱいにできる。
他のことも考えてないわけじゃないけど、頭は動いているつもりで心は別の方向いて突っ走ってるからな。





再会したファウストが “変わってなくて嬉しかった” フィガロ、レノにも似たような嬉しさを感じたと思う。
再会して「おまえは変わらないね」って言ってるし。
年2桁でまだほぼ人間と同じような頃に主を救えないまま失った絶望を抱えて、長寿な魔法使いとなっても変わらず主を探し続けてた忠臣のレノは、フィガロが幾度も置いていかれて絶望した大地さえ変わりゆく長い時、絶望に打たれて変わる者、そういったどれもに影響されなかった男だよね。





ファウストの微笑みとフィガロの眼差しを受けると、聖母の絵画を前にした時にすーっと心の芯が清らかな水で満たされて全ての生命を尊く愛おしい存在だと大地から感じるのと似たような、自分の命に慈愛を注がれる感覚がある。
元々そういう子なのはそうなんだろうけど、でも、ふとした時に、ファウストが纏う神聖な残り香はフィガロという神様から受け継がれたもののように思える。