01
なまえ、なんていうの?
わたしの手を握りしめたまま、おそまつ、と名乗った男は、死体を蹴散らしながら街を歩いていく。
血の匂い、人の死に顔。
おそまつさんは、ろくに返事も返さないわたしを不審そうに振り返った後、その場に溢れる死の匂いでむせ返りそうになるわたしに気づいて、小さくため息をつく。
「まあ仕方ないか」
慣れてないもんねえ。
やれやれといった感じでわたしを抱えあげて、肩を顔を埋めさせる。
「車まで我慢してね」
ゆさゆさと彼が歩く度揺れて、何かがこみ上げそうになるのを必死に我慢する。
今考えれば、わたしはなんと、危機管理能力のないこどもだったのだろう。
見知らぬ男、それも目の前で人を殺した男を信用しきっていたのだ。
たとえ、その男が両親の仇をうってくれた人だったとしても。
「到着しましたよお姫様」
ヘラヘラ笑う彼が、わたしを黒塗りの大きな車の後部座席に押し込む。
ぱちくり、と、車の中の10の視線が、私を捉える。
「ゲッ、何連れてきてんだよ兄さん!!」
そう眉を寄せたのは一番後の座席に座る神経質そうな男で、その隣では目のクリクリとした男が携帯をいじっている。
私が押し込まれた両脇にはおそ松さんと眠たげな男が陣取り、運転席にはガタイのいい男、助手席にはなにやら楽しげに笑う男。
「おなじかお」
ぽつりと零したつぶやきに、おそ松さんがにししと笑う。
「ビックリしたっしょ?こわいオニーチャンたちじゃないからね!俺達六つ子なんだ〜」
「それ誰?」
ピンクのシャツの男が、大きな瞳を私に向けて小首をかしげる。
敵意を含んだ視線ではないものの、品定めするようなそれに、居心地が悪くておそ松さんの赤いシャツをつかむ。
「んー、拾ったんだけど……あれ、なまえなんだっけ」
呑気な彼に、10つのじっとりとした視線が向けられる。
ぎゅっと拳を握りしめて、震える唇を恐る恐る開く。
「……なまえ、なまえです」
かろうじてひり出した小さなつぶやきは、ちゃんと彼らに伝わっていたらしく。
よろしくな、なまえ、なんて、おそ松さんは、大きな手のひらで頭をなでてくれた。
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