いちにちめ・3
「今更だけどあの子らわたしのことわかるんだねぇ」
ぐにぐにとひき肉を潰しながら、きゃいきゃいと居間ではしゃぐちびっこをちらりと見やる。
ちびっこだけにしておくのはちょっと心配だけど、あん〇んまんをいれておいたから大丈夫だと信じたい。
七人分の食事を一人で作る重労働はしたくないし。
「あー、なんか精神年齢は戻るらしいけど記憶は消えないっぽい?」
「ご都合主義だ……」
「でもありがたくね?」
「まあね」
じゃがいもをむくおそ松の手つきに少し冷や冷やしながら、夕食の準備を進めていく。
結局、押しに負けて今日は泊ることになってしまった。
想像もしたくないけどなんやかんやで一週間ここにいる気がするぞ…。
「おそ松なんでそのまんまなの?」
「俺飲まなかったもん。様子見」
「お前マジで最低だな……」
「褒められると照れるって」
全く悪びれないおそ松をジト目で見ながら、ひき肉を丸めていく。
「なまえ料理うめーよな。彼氏いないけど」
「おそ松そんなにご飯食べたくないのか、そっか」
「あーヤダヤダうそうそ!ごめんなさい!」
「彼氏いたらこんなことしてないけど」
鼻を掠める肉が焼ける匂いにお腹すいたなあとぼんやり思う。
今日の晩御飯はおそ松が慣れない手つきで作ってくれたポテトサラダと、ハンバーグ。
おそ松ってなんだかんだで手先器用なんだよなあ。
「……おまえ彼氏ほしいとか思うわけ?」
「え?うーん……そうだなぁ…ほしい、かなぁ……」
「っ、だ、だったら、」
ぐっと手首を掴まれて、ふとおそ松の方を向くといつになく真剣な瞳が視界に飛び込む。
こいつのこんな顔はじめて見るかも。
「だったら、俺ーーーーー」
「なまえちゃ、おなかすいたー!」
「ぼくだっこ!」
いつの間にか足元にきゃらきゃらと集まるちびっこに苦笑して、もうちょっと待ってねー、と焼けたハンバーグを盛り付けていく。
うん、美味しそう。
「おそ松ご飯よそってー」
「………………あぁ……ウン……」
肩を落としたおそ松が炊飯器を開けて、ご飯をよそってもらう間におかずを机に運んじゃおう。
手伝う手伝うと手を伸ばすちびっこに小さいお皿を一つずつ渡して、自分の分を運んでもらう。
「落としちゃダメだよー」
「うん!」
机まで運びきったちびっこのキラキラした視線に、よくできましたと頭を撫でてやれば、えへへと嬉しそうに笑われる。
うう、かわいい。
「スープもってくからみんな避けてねー」
「……ご飯取りに来てー…………」
机の上に所狭しと並べられたお皿に、ちびっこのテンションは急上昇する。
いただきますと手を合わせて、随分お腹がすいていたんだろう、どんどん消えていく料理に小さく笑う。
隣のおそ松はすっかり静かで、そういえばさっき何言おうとしてたんだろ。
まあ、何も言ってこないし別にいいのかな。
そう思いつつ、しょげたおそ松に小さくため息をつく。
うーん、私も甘いなあ。
「おそ松ありがとうね」
いいこいいこ。
ちびっ子にしてあげるみたいに髪をなでて、小さく笑う。
おそ松は丸い目を見開いて、え、だかう、だかわからない声を漏らして頬を染める。
「う、うわぁぁぁ!」
「おそ松うるさいよ」
「お、お前なにそれなにそれ!も、もー、ずるいしお前っ」
両手で顔を覆ったおそ松は耳まで真っ赤で、何だかそれが面白くて可愛くて、ケラケラ声を上げて笑ってしまった。
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