力の正体−6


そこに金造が帰ってきた。必死で抵抗する朝祇を見て、助けてくれるかと思いきや。


「ちょ、なに押さえつけてんですか!?」


金造は朝祇の後ろに回り、朝祇の腕を後ろで拘束する。しかも片手で。易々と片手で押さえつけられてしまい、さらにもう片方の手が肩からシャツを脱がす。
柔造も引き続きボタンを外していき、ついにシャツは金造が押さえる朝祇の腕のところまで脱がされてしまった。


「おー…やっぱ顔が綺麗やとなんやエロいなぁ…濡れとるんも色っぽいし」


金造は後ろから朝祇の耳元で囁くように言った。低い声が鼓膜を震わせ、首筋をぞわぞわとしたものが走る。


「ひっ…!」

「お、一ノ瀬君、耳感じるん?」


その様子を見た柔造はニヤリと雄っぽく笑い、わざとゆっくり朝祇の耳にかかる髪をかきあげた。
ほんの触れる程度で耳を撫でる指に、やはりぞくぞくとした感覚が走った。


「ぅ、あ…じゅうぞ、さ、」


思わず涙目になって、もうやめてくれと柔造を見上げた。しかし、柔造は笑みを消して真顔になる。後ろからは金造の息を飲む音が聞こえた。


「あー…あかん、こりゃあかんわ。はよ目的達成せんと」


犯罪や犯罪、と柔造は急いで朝祇のベルトに手をかけた。
ベルトに、手をかけた。


「――っ!!何やってんですか!!」

「こっちも濡れとるやろ?安心しぃ、何もせえへん」

「信用できるかぁ!!」


つい敬語も取れるが、「タメ口なんて悪い子やんなぁ?」と金造が言って、空いている手でつう、と背中を撫でた。
先程から首筋に変な感覚が走っていたため、たまに友人から擽りとしてやられる感覚とは程遠い強い衝撃が走る。


「ひぁっ、ぁ、」

「かーわい」


背中を仰け反らすと、近づいた耳元に金造はそう囁いた。横目に見ると、こちらも雄を全開にして笑っていた。

その間にベルトとスラックスの前がくつろげられ、下着が顔を覗かせた。そのままスラックスはずるずると脱がされていき、くるぶしソックスと下着だけとなってしまった。
あまりの恥ずかしさに俯くが、体を這う赤や黒の模様が目に入り、さらに逸らした。


「…やっぱり、これは―――」


柔造が脱がし終わって、何かを言いかけたときだった。


「おい、柔造はおる…か…」


襖が開き、女性の声が落ちた。ハッとそちらを3人揃って見ると、頬に蛇の鱗のような模様を浮かべた白銀の髪の女性が立っていた。その目は見開かれ、 愕然としている。
つぅ、と朝祇の頬を先程被った水がつたると、女性は弾かれたように柔造を睨み付けた。


「…なにしとるんじゃこの申ぅぅぅうう!!!」


「誤解や蝮!!待て!!」

「誤解もなんもあるかぃ!!坊主ともあろうもんが少年とい、淫行するんかぁぁぁあああ!!!」

「話を聞けやあああ!!!」

「やってまえ柔兄!!」


蝮と呼ばれた女性は激昂し柔造を詰る。柔造もなぜか逆ギレし、金造はそれを囃し立てる。突然カオスになったことに呆然とすると、蝮の腕が突如として人間ではあり得ない軟体な動きを見せた。

蛇だ。両腕が蛇となり、柔造に襲い掛かる。柔造はそれを蹴飛ばして、瞬時に坊主がよく持っている錫杖を組み立てて構えた。そして、まるでバトル漫画のように戦い始めた。

そりゃ、黄龍もいればナーガくらいいますよね、と朝祇は遠い目にならざるを得ない


「ちょおいったいなんの騒ぎ…って何しとん!?」


そこへ廉造が帰ってきた。戦いを続ける柔造と蝮、それを応援する金造、そしてほぼ全裸に近い状態になっている朝祇を見て、すぐこちらへ駆け寄った。


「一ノ瀬君!大丈夫?怪我しとらん?」

「だ、大丈夫、だけど…」

「もう平気やで、堪忍なぁ、怖かったやろ…俺がおるからもう大丈夫や」


廉造はそう言って朝祇を庇うように抱き締めて、ぽんぽんと背中をあやすように撫でた。その温もりに、一気に脱力する。
正直、いくら志摩の兄たちといえど怖かったし、蛇が出てきてからはもう理解が追い付かなかった。


「あの蛇は…」

「あの人は宝生蝮さん言うて、俺らや子猫さんと同じ、僧正一族のひとつの長女や。ナーガを使役しとる。…怖かった?」


無言で頷き廉造の胸元に寄り掛かると、抱き締める力がさらに強くなった。


「寒いやろ?着とき」

廉造はそう言って着ていたワイシャツを朝祇の晒された体にかけた。前を開けてシャツを見せるスタイルだったため、すぐに脱げたようだ。一瞬で廉造の香りに包まれて、少しドキリとする。なぜなのかは分からないが、ネガティブな気分ではまったくなかった。


「騒がしい!!いったいなんやねん!!!」


さらにそこへ、顔に大きな傷のような模様がある初老の男が乱入してきた。その声は誰よりも張りがあり、一気に場は静まる。ようやく、居間に平穏が訪れた。


「ひっくしゅん」


そして、そのタイミングでくしゃみをしてしまった朝祇に視線が集まることとなった。


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