正十字学園−2
受験は京都市内に会場が設けられていたため、実際にここへ来るのは初めてだった。
東京、正十字学園町。
様々な学校施設、研究施設その他関連施設が集約され、周辺には関係者の暮らす町や、学生向けの繁華街などがある。そもそもが東京都心と横浜に近い場所であることもあり、交通の便からオフィス街や大規模な住宅街も広がっている。
日本のモンサンミッシェルとも呼ばれる荘厳な光景は、しばし呆然とするには充分だった。
「……思ってたのより10倍でかいねんけど…」
廉造が言った言葉に、全員で頷いた。朝祇も東京にいる頃からこの街は知ってはいたが、実際に来たことはなかった。
「と、とりあえず寮行こう、荷解きしないと」
「せ、せやね…」
中腹駅から路面電車に乗り替え、寮へと向かう。少し進むと、街の中心に聳える小山の周りを取り囲むようにして建ち並ぶ建物の合間に、洋風の豪奢な建物が現れる。小山のどの辺りでも行きやすいようになのか、辺りにはたくさんの連絡橋がアーチ建築で張り巡らされ、まるで迷宮だ。
男子寮に程近いところで路面電車を降りると、ちらほら新入生らしい学生たちが歩いていた。新入生だと分かるのは、辺りをキョロキョロと見渡しているからだ。
それに倣って、周りの様子を確認しながら4人も寮へと入る。
外見もエントランスも、まるで高級ホテルだ。レッドカーペットにシャンデリア、窓は装飾が入り、壁には絵画が飾られている。
フロントで部屋を確認し、鍵を受け取る。指定された部屋へ向かうと、角部屋だった。4人で入れる部屋らしい。
実は、朝祇は廉造たちと同じ部屋だと知っていた。それというのも、廉造がメフィストにスパイを依頼された際、報償として朝祇と同じ寮、同じクラスにさせたと聞いたからだ。寮に関しては明陀宗の関係から配慮され、勝呂と子猫丸も一緒だ。
しかし同じ部屋といえど、扉を開ければ廊下があり、右側に寝室の扉が4つある。つまり、1人1部屋寝室があるのだ。左側の手前には風呂と洗面台、トイレ、キッチンと3つの扉があり、廊下の先に共同スペースのリビングがある。リビングとキッチンはオープン型でくっついている。
「ホテルよりすげえ…マンションだな」
「さっすが金持ち学校、二段ベット4つとかやないんやね」
「無駄遣いやろ…」
「使わせてもらうんはありがたいですけどね」
口々に感想を漏らし、リビングに据え付けてあるソファにそれぞれ座った。送っておいた荷物もリビングに置いてあった。部屋中に「点検済み」のシールが貼られているのは、もはや過剰だ。
時刻は午前11時、荷解きをしてちょうど昼時になる。少し息をついてから、各々自分の荷物を持って好きな場所に向かう。
「ぼーん、どこにしますー?」
「俺はどこでもええ。一ノ瀬はどうすんねや」
廉造はまず勝呂に部屋の位置を訊ねた。子猫丸も返答を待っている。やはり序列があるからだろう、それは勝呂も分かっていたようだが、本当にどこでもいいらしい。だが決めないことには廉造たちに悪いし、何より朝祇より先に決める権利もない。そういった考えから、勝呂は朝祇に振ったのだろう。
「俺もどこでもいいからなぁ…俺端にするから、廉造と子猫丸で勝呂のこと挟めば?」
「おん、それがええやろな」
「りょーかい、せやったら俺は朝祇と坊の間でええ?」
「僕は構しまへんよ」
そうして、リビングから順に子猫丸、勝呂、廉造、そして一番玄関側に朝祇という配置になった。