鬼ごっこ−2
炎天下、園内の飲食店が並ぶ区画を燐、しえみと3人で歩く。先程から歩き方がきごちないしえみ、どこか照れた面持ちの燐と、やりづらいことこの上ない。そもそも朝祇はしえみとはあまり関わりがないため、尚更だ。
「燐は右側を見てて!私はこっちを見てるから!」
「お、おう…」
しかも、完全に2人の世界というか、朝祇は蚊帳の外だ。天然なところがあるしえみのことだ、単純につい燐と話してしまうだけだろう。
そのため、燐たちの後ろ5メートルほど離れたところを朝祇は歩いていた。
「お、おい、しえみ、大丈夫か?」
そこで、ようやく燐はしえみの変な歩き方に気付いたらしい。しえみは立ち止まり、くるりと振り返る。
その顔は何かを堪えるような、変に力の籠った、有り体に言えば不細工な顔になっていた。
内心で(うわ、ぶっさ…)と思ったが、さすがにそんなことを言うのは憚られる。
「しえみ!?どうした!?すっげー顔不細工だぞ!?」
お前が言うんかい。
朝祇は呆れてしえみの様子を窺うが、気にした様子はない。
「べ、別に笑ってなんかないもん…」
「はぁ…?」
しかも、何やらよく分からないことを言っている。燐も伝わらなかったのか、聞き返すもしえみは先に進み出す。訳が分からない、と思うも、すぐにその訳は明らかになる。
道を抜けて大きな広場に出ると、正面に時計台、その奥にジェットコースターや観覧車など遊園地らしい光景が広がる。それを見た瞬間、しえみは満面の笑みを浮かべて「うわぁ〜!!」と感嘆の声を上げた。どうやら、テンションが上がって笑顔になってしまうのを任務だからと堪えていたようだ。
「しえみ…?」
「あ…ごめんなさい、私、遊園地ってすごく憧れてたの…」
燐が後ろから声をかけると、しえみは恥ずかしそうに俯く。そして、素直に話し始めた。
「でも、小さい頃は人混みが苦手だったから…遊園地なんてとんでもなくて。きっと、普段は賑やかで楽しいんだろうなぁ…」
しえみの話を聞く燐は真面目な表情をしている。以前、料理教室をやってもらっているときにしえみとの関係を聞いたら、燐は似た者同士なんだ、と言っていた。きっと、2人にしか共有できない想いがあるのだろう。
「でも、今の私なら…」
「…、こ、今度、い、一緒に遊びに来ようぜ!」
(お……お………?あ、そういう…)
照れつつとはっきりと言った燐の様子に、朝祇は薄々察していたことが確信に変わった。どこか初々しいところがある2人だ、お似合いに見える。
「うん!」
「ま、マジで!?ぜ、絶対だぞ!?」
「うん!絶対行こう!!」
「は、はは、よし、じゃあ次どこ探すか決めようぜ!」
2人とも、ものすごく嬉しそうにしている。楽しげに地図を覗く2人には、朝祇がいることなど頭にないのだろう。それについてはまったく怒っていない。むしろ微笑ましい気持ちでいっぱいだ。
(どうしよ黄龍、あの2人可愛い…)
『何を年よりのようなことを言っておるのだ』
(なにあの初々しい感じ、俺と廉造にはまったくない甘酸っぱさ…)
『お主らも遊園地とやらに行けば良いだろう』
(遊園地デートか…)
廉造と2人で遊園地。絶対楽しいだろうということが容易に想像できる。すごく行きたい、と思うが、そう思っている自分が少し照れ臭くて頭を振った。
『お主も同じようなものよ』
「うっせー…」
思わず口に出してしまいながら歩き出す。すでに行き先を決めた燐たちの後ろを着いていきながら、どう誘おうか、なんて考えてしまうのだった。