priceless preciousness−1
●主従パロ
燐(執事)×主(金持ち子息)
正十字学園がただの金持ち学校です。相変わらず祓魔してない。
15歳になり、千秋は次期当主として社交界デビューすることになった。これまでは顔が知れていなかったために護衛などはほとんどつけることはなかったのだが、これからは常に側で身の安全を守るための護衛兼執事がつくことになっていた。
二宮家の一人息子である千秋の執事は、代々執事の家として二宮に仕えてきた藤本家から出すことになっていたのだが、どうやら少し問題があるらしい。
今まではすんなりと決まってきたことが、前例のない揉め方をしているそうだった。
なんでも、藤本家当主である藤本獅郎は今まで二宮家に仕えることを拒否し続け放浪しており、代わりに公募した者が現二宮家当主に仕えていたそうだ。その当主の息子である千秋の執事は、本来藤本獅郎の息子がなるはずだったが、獅郎は50を過ぎた今も独身で子供がおらず、分家の奥村家から執事を出すという話になったらしい。
しかし奥村家は当主夫妻が事故死してからというもの、その双子の息子は物心つく前から獅郎のもとで育ってきた。つまり、とてもじゃないが執事には向いていないというのだ。
だがこのままでは双子の後見がいなくなると気付いた獅郎は、反抗をやめて二宮家の執事という家柄に復帰することを決めた。そこで双子をどうしても執事にしたいということになり、双子の兄の方を推している。その兄は有り体に言えば不良で、どうせなら医者志望で頭の良い弟の方が、と二宮家は要求した。ちなみに、獅郎が育てただけあって、双子はともに腕っぷしは強いらしい。
やはり名家である二宮家の執事として、文武両道が大前提。それなら弟の方がいいというのは理にかなっているが、兄も獅郎もそれは嫌だという。
立場的には、獅郎も双子も世間の荒波に放り出すことができる二宮家の方が遥かに優位である。獅郎と兄は強く出れないことを承知で頼み込んでいるという。
判断しかねた当主は、ついに面接をして決めることにした。もちろん、仕えられる側の千秋が面接官となる。ようは、千秋に丸投げされたのだ。
そして、その面接の日がやって来た。
***
2月の終わり、徐々に寒さも和らいできた頃。
二宮家の邸宅の応接間に、奥村家の双子の兄、奥村燐がやって来た。使用人に通された燐は、千秋が座るソファーとテーブルを挟んで反対側のソファーに座った。使用人はテーブルに紅茶を置くと、一礼して部屋を出ていく。
広い部屋に2人きりで、緊張した面持ちの燐にこちらまで緊張しそうだった。
「あー…二宮千秋です、よろしく」
「あっ、奥村燐だ、っ、です!すんません先に名乗んなくて!」
不良とは聞いていたが、青みがかった黒髪以外にはなんの変哲もない。少し目つきが鋭く、言動が粗野で、体つきからして喧嘩していそうなだけだ。いや、それを世間は不良と呼ぶのか。
「俺も突然言われて何すればいいのか分かんないけど…同い年だから、そんな固くならないでよ」
「い、いえ!お気になさらず!」
敬語も慣れていないのがよく分かる。そのちぐはぐな感じが面白いとも思うが、こちらもやりづらい。それに、正直執事が誰だろうともどうでも良かったのもあり、等身大の燐を知りたかった。
「ほんと、敬語とかいらないし。むしろ俺、そういうのあんま好きじゃないからさ、ガチガチの執事のが嫌なくらい」
「え…じゃあ、タメ口とかのが、いい感じ、ですか」
「そうそう。普段の口調でいいよ。へたくそな敬語よりマシ」
「…じゃあ、お言葉に甘えるぜ。ぶっちゃけ敬語得意じゃねえから、助かる」
「うん、そういう口調のが似合ってるよ」
それに嘘はない。一律同じである必要などないと思うのだ。燐には燐に合った態度でいい。少なくとも今はそれで良かった。