Stoic Love 2−3
飲み会も終盤に差し掛かると、竜士もそろそろ酔ってきてトイレに席を立つ。なかなか混んでいて、10分ほど時間を取られてから戻ると、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
「おっ、勝呂君おかえり〜」
幹事の男がへらへらと迎えたその腕の中には、千秋は顔を赤くしてもたれていた。そのわりに、どんどん徳利の中身を口に流し込んでいる。
「い、いったいこの短時間で何が…」
「そっか〜、勝呂君これ見るの初なんだ〜」
すると幹事の隣の女子がケラケラと笑い、千秋の肩を叩く。
「千秋君、ほら、カルーアミルクだよ」
「ん〜…」
呼ばれた千秋は幹事を離れると、その女子の手から可愛らしいグラスを受け取る。その際に触れた手は握ったままで、千秋はぐいっと可愛い割りに度数はそう可愛くないカルーアミルクを飲む。
「千秋は酔うとハグ魔になんの。マジウケるよな」
「やーんカワイイ〜」
女子の肩に額を寄せる千秋に、女子はデレデレだ。普通ならセクハラ案件だ。
「イケメン無罪って感じ〜、てか役得?」
「ずりぃ、千秋、今度は俺のチェリーミルク飲めよ!」
「下ネタかよ!!」
今度は先ほど告白すると叫んでいた男がグラスを持って千秋に手招きする。ふらふらと呼ばれるがままに千秋は男子にグラスを渡されて飲んでいく。千秋の肩を抱いてインカメで写真を撮る男。
この光景に断続的に感じていたもやもやがピークに達していた。
「……千秋」
低く呼ぶと、千秋はパッと顔を上げる。視線を合わせると、千秋はすぐにこちらへ寄って来た。幹事の横の空いた座布団に座ると、胡坐をかいた竜士の膝の上に向かい合うように千秋も座った。
そして、上体を竜士に完全に預け、顔を竜士の肩に埋めてぐりぐりとする。
「対面座位じゃん!」
「おい下ネタ!」
男子たちの笑いが聞こえるが、竜士は「まだそれやってへんかったな」と思うだけである。
甘えてくる千秋の背中を撫でてやると、幹事が「へぇ」と感心したような声を上げる。
「やっぱ、千秋は勝呂君に構ってほしかったんだな」
「?どういうことや」
「こいつさ、もともと人との距離が近いんだよ。イケメンだし爽やかだしで気にしなかったけど、普段から結構近いんだよな」
「そうそう、あたしも最初はびっくりしたけどすぐ慣れちゃった。きっと、勝呂君にそうしていいか迷ってたんじゃないかな」
幹事の横の女子も頷く。考えてみると、何か言いたそうな、伺うような目を向けてきたこともあった気がする。
「自分から言いにくいこともあるだろうし、何より無意識だろうしな」
ふと、昨晩を思い出す。珍しく千秋から誘ってきてくれたときだ。
控えめに手を握りシャツの襟を噛んで引っ張るという誘い方のあまりのいじらしさに、その場で暴発するかと思った竜士である。あれもきっと、言葉で言えなかった千秋の精一杯だったのだろう。
そしてこの酔って甘えてくる姿。他のやつらには酒がないと行かないくせに、竜士は呼べば来た。
「なんでこいつはこないに可愛いんや」
「ほんとそれ」
竜士が思わず言うと、幹事が楽し気に同意した。もう我慢ならない、と千秋は財布から2人分の会費を出して幹事に渡す。
「お持ち帰りするさかい今日はこれで」
「あはは、いんじゃね、千秋もまんざらでもねぇっしょ」
「たまにはあたしらにも千秋君シェアしてよ〜」
幹事と女子に見送られ、竜士は千秋を抱き上げて立ち上がる。
とりあえず、帰ったら存分に甘やかすつもりである。