君はヒーロー−9





「……俺にとって、お前は、ヒーローみたいなもんやった」

「ヒーロー…?」

「よう助けてくれたやろ。俺の実力がついたら一緒に喧嘩することも多なったけど、それでも、お前が圧倒的やった。せやから、今度は俺が守りたいて思うたんや」

「あぁ、学生時代ね…でもこの前助けてくれたじゃん、約束通り。あれこそヒーローだったよ」


かつていじめを受けた竜士を庇い、一緒に怪我をしながら上級生を倒したり不良と戦った日々を思い出す。確かに千秋はヒーローのようだったかもしれないが、それはこの前の竜士の方が言える。学生時代の、「いつか俺がお前を守る」という約束通り。炎の中、もうダメかもしれないと思ったときに駆け付けてくれた姿は、まさにヒーローだった。


「…確かに約束は守れた。せやけど、もし間に合わんかったらて思うたら、ゾッとすんねん。やり残したことぎょうさんあんのに。もう、あないな思いしたない」


どうやら、取り残された千秋と同じように感じたようだ。死を意識したとき、まだまだ2人でやりたいことがたくさんあった。一種後悔のようでもあった。


「俺かて危険と隣り合わせや。せやから、なるべくお前と、1秒でも長くおりたいし、1つでも多くのことしたい」


そして、竜士は意を決したように顔を上げる。続きを待つと、スーツのポケットから、小さな箱を取り出した。その箱だけで察してしまい、思考が止まる。






「……千秋。俺と、結婚してくれ。もちろん法律は無効かもしれへんけど、そないなこと関係あらへん」


開かれた箱には、シルバーのリング。言葉とそれが指すことは、混乱する千秋の頭の中にもスッと入ってきた。
いつの間にか竜士は自身の指に同じものをつけていた。





「今度は、生涯、お前を守る約束をさせてくれへんか」




生涯守る約束をさせて欲しい、なんて、あまりにも格好良すぎやしないだろうか。

ぽろり、と目から水滴が零れるのが分かった。それを止めることもせず、小さく頷く。
竜士は息を詰めて、リングを千秋の左手の薬指に嵌めた。


「…りゅう、じ……好き、好きだ、愛してる」

「っ、俺もや……!!」


同じ指輪がついている竜士の手を、リングを重ねるように握る。そして囁くように言った言葉に、竜士も極まったように返した。


その瞬間、ワアッとホールが沸き立った。
びっくりして見てみると、客が全員立ち上がって喜んで拍手している。よく見ると、男性客は全員どこか厳つい。さらに、見覚えのある男もいた。あれは、竜士の隊の隊長だ。


「よくやった勝呂!」

「よっ、男前!!」

「おめでとう勝呂さん!二宮さん!」


全員、もしかしなくてもレスキュー隊の面々だろう。さすがに竜士の知り合いで非番の者だけだろうが。女性客はその妻たちらしい。


「実は、俺らで貸しきってたんや。ホテル側に手伝ってもろて、サプライズで」


なんと、竜士たちレスキュー隊で貸しきったらしい。貸し切りの値段は正直とんでもない。もちろんそんなことは知らされていなかったのだが、上司にもサプライズさせられたようだ。
見渡すと上司以外のホールスタッフがいない。きっとこれは、職場で必要以上に同性と付き合っている――――結婚していることを広めないためだ。



「…はは、ほんと、竜士は…!」


そんな細やかな配慮まで竜士らしくて、思わず笑ってしまう。


その拍子に、また雫がひとつ、テーブルにこぼれたのだった。


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