ぴったりずれる−1


●救いの祈りと同設定
ライトニング(31)×主(21)



「いやぁ、東京と同じ感覚でいたら失敗だったなぁ!」

「バカだろ」


あっはっはと笑うルーインは、ガタガタと震えながらビルの風に吹かれた。極寒の風が、アスファルトに積もった雪を巻き上げる。


ここは韓国の首都ソウル、季節は12月も下旬である。街角にはクリスマスの飾りつけが見られる。パッと見ると日本の都市と似ているのに、ハングル文字が看板に踊るのは、やはり西洋から見ても違う町なのだと感じられる。
それなのに、この男は東京の気候と同じだと高をくくってきたらしい。


「いやだってこんなに似てるのにさ!?なんでこんな気温違うのかなぁ!?」

「大陸だからだろ。いいから早く歩いて」

「うう、千秋なんで言ってくれなかったんだ、ソウルはこんなに寒いって」


太平洋に面して、暖流や気圧の関係で温暖な東京。一方でソウルは大陸の寒気の影響をもろに受ける気候のため、非常に寒いのだ。普通にいろいろと凍る。
千秋はしっかりと把握して防寒しているが、ルーインはいつもの薄着だ。道行く人々もおかしなものを見る目だった。


「さんざんだよ、クリスマスを恋人と過ごせると思ったら任務で韓国まで来て、しかもこんなに寒いなんて!」

「そう言いつつさっきサムゲタンにうつつ抜かしてくせに」

「東アジア最高」

「あほ」


震えるルーインは、今もしっかりとカルビの串焼きを両手に抱えている。悪魔の討伐は終わっており、現在ソウルの韓国支部に向かっているところだ。

ルーインに串を差し出され、受け取らずにそのままかぶりつく。香ばしくも柔らかく、スパイスの効いた肉は寒い町にぴったりだ。


「にしても、結構クリスマス一色だねぇ。東京もそうだけど、こっちのがなんかこう、ガチ勢?」

「日本よりはるかにキリスト教徒が多い国だからな。商業色と宗教色が半々ってとこか」

「アジアの商業色丸出しのキリスト教行事好きだよ。あからさまで面白いよね」

「はいはい」


一応、欧米での生活が長い二人からすれば、やはりアジアのイベント的なクリスマスやイースター、ハロウィンは不思議に見える。


「さーて、千秋、クリスマスだし、どっかレストランでも行く?鍵使ってミラノでも行こうか」

「イタリアは宗教色ガチ勢すぎて閉まってるだろ。つか、俺は今日クリスマスじゃない」

「へ?」


逆にイタリアあたりはクリスマスに店が閉まっていることが多い。
そのうえ、千秋はもともと今日はクリスマスではなかった。


「東方正教会の暦はグレゴリオ暦じゃないから、クリスマスはグレゴリオ暦でいうと1月7日あたりだ」

「そうなんだ!まぁ、僕もプロテスタントだけど無神論者寄りだし、別になんでもいいや。でもなんか、特別なことしたくならない?」

「最近アジア回ってたからめっちゃ影響されてんな」


どうにも感覚がアジアテイストになっているルーインである。千秋も、別に敬虔な信徒という自覚もない、世間が今日をクリスマスというなら合わせてやってもよかった。
ぶう、と頬を膨らませる30代男性にドン引きしてやってから、千秋は適当な扉に鍵を差し込んだ。なかなか人通りが多くて大変だった。なぜ大きなデパートのあるところで地下鉄を降りたのか。

扉をくぐって韓国支部に入ると、報告を済ませて今日の任務は終了する。ミサ(礼拝)をするのはイブなので、今日は韓国支部も閑散としている。
地下施設の扉を再びくぐると、そこはヴァチカン。こちらもクリスマスだからか人は少なかった。


prev next
back
表紙に戻る