確信犯
●完結後
あきらんさんより頂いたネタ
廉造×主(←)ライトニング
京都への帰省のあと、またいつも通りの日々が始まった。
心なしか朝祇と廉造の距離は縮まったものの、関係性が大きく変わったわけでもない。いや、変わったわけではない、はずだった。
***
ある日の魔法円・印章術の授業にて、そろそろライトニングの適当さにも慣れてきた頃だった。
「じゃあラバルムの魔法円を書いてみてもらおうかな。一ノ瀬君!」
「はい」
指名されたので前へと向かい、黒板に魔法円を作図する。難しいものでもない、さっさと書き上げると、ライトニングは頷く。
「そうそう、ありがと」
礼を言うと、ライトニングは朝祇の尻をするりと撫でた。たまに廊下でスレ違い様にもやられるので、慣れたようにはたき落とす。
ライトニングも気にしていないようで、朝祇は無言で席に戻った。
「あのエロ親父…」
すると、隣の廉造が親の仇のようにライトニングを睨み付けていた。そして呟く言葉に、少し呆れる。
「お前もこのままいったらエロ親父だからな」
「せやけど!朝祇は俺のやろ…」
そう苛立つ廉造だが、面倒臭がりな廉造のことだ、一応教師でもあるライトニング相手に何か仕出かすとは朝祇は思っていなかった。
「そうだ、一ノ瀬君、放課後に僕の部屋来てもらっていいかい?手伝って欲しいことがあるんだ」
「あ、はい」
「それ俺も手伝いますよ〜」
しかし授業の終わりにライトニングが朝祇に手伝いを頼むと、なんと廉造が自分から手伝いを進み出た。それには塾生たちも驚いてこちらを向いた。
「お前、ホンマに志摩か…?」
「志摩さんどないしはったんや…」
「熱でもあんのかよ志摩!?」
「ちょお酷ない!?」
愕然とする勝呂や子猫丸、ドン引きしている燐と男子組は驚きを隠さない。廉造は憤ってみせるも、本人も柄でない自覚はあるのか強くは出なかった。
「君にそんな殊勝な一面もあるなんてぼかぁ感動したよ!mom…勝呂君もいるから必要ないけど手伝ってもらおうかな」
「誰がオカンや」
「頼む言い方かいなそれ…」
ニヤニヤと通常運転のライトニングに、勝呂と廉造の突っ込みが力なく落ちた。
そうして授業後、朝祇と廉造、勝呂の3人はライトニングの部屋へやって来た。勝呂はジャーマネとしての習慣である。
ノックして許可を得てから、3人は室内へと入る。
「いやぁ、ありがとね。じゃあ勝呂君と志摩君で印章紙の作図お願い。一ノ瀬君は僕とお喋りしようか」
「えっ」
呼ばれたのは朝祇のはずなのに、仕事をやらされるのはまさかの廉造と勝呂だった。有無を言わさず印章紙を押し付け、ライトニングはカラーボックスに座って朝祇を正面に立たせた。
「いや、なんで俺…」
「一ノ瀬君の黄龍の魔障をちゃんと見たいなぁて思ってね。1000年以上も封印されてきた黄龍の魔障なんて、誰も見たことないわけだし」
「はぁ…」
分かるような分からないような、そんな微妙な説得力の言葉で言われた。とりあえず朝祇が相槌を打つと、ライトニングはおもむろに朝祇の制服のシャツを開け始めた。
「ってちょ、何して、」
「魔障見るからボタン外さないと」
「いや、おい、」
「はは、君は可愛いなぁ」
その前髪越しの目は明らかに楽しんでいたが、少しの熱も感じられて、思わず抵抗してしまった。
するとそこへ、朝祇の肩が抱かれて後ろへ引っ張られる。嗅ぎ慣れた安心する匂い。
「ちょっと手伝ってもらいたいんで、朝祇借りますよ」
「廉造、」
引っ張ってきたのは廉造で、ライトニングの返答も聞かず作業していた机に戻る。連れていかれながらちらりとライトニングを見ると、やはり楽しげに目を細めていた。
「それなら仕方ないね。そうだ、今日このあとご飯でもどうだい一ノ瀬君」
「朝祇は今日俺と予定あるんで」
「志摩君には聞いてないけど、まぁいいや。じゃあ、ぼかぁ小腹空いたからカフェテリアでも行ってくるよ」
ライトニングがなおも誘えば、廉造は間髪入れずに答える。それに気を悪くするでもなく、ライトニングは快活に笑って部屋を出ていった。
その後姿を、ガルル、と唸り声でも聞こえてきそうなほどに廉造は睨み付けていた。
ライトニングが離れていってから、部屋には沈黙が落ちる。朝祇としては、ライトニングがほとんど愉快犯なだけだとは分かっている。だが、本気で警戒して朝祇の肩を抱く廉造に、悪い気はしない。
「朝祇、あぁ言ってもうたからには帰りしなにどっか寄ってこか」
「…しょうがないな」
そして、こうやってライトニングを避けようとなるべく側にいようとしてくれるのも、くすぐったく感じる。だから、ライトニングの本当のことを伝えるのは止めておいた。
何も言わずに、朝祇は廉造に身を寄せる。
もう少し、余裕なく朝祇にくっついてくる廉造の温もりを楽しむのもいいかな、なんて思うのだ。
「……お前らイチャつくんなら余所でやれや」
そんな勝呂の呆れた声を聞き届けた者は、あいにくこの部屋にはいなかった。