そういうこと
●4年前
柔造(21)×夢主(14)
R-15
それに気付いたのは、京都市内のパトロール中だった。9月の残暑の中、いつものように異常がないか見ていると、子供たちが何やらボロボロの雑誌を持って騒ぎながら走っていく。
「エロ本や〜!」
「秘密基地持ってくで!」
「はよ走れ!」
わいわい騒ぎながら持っていったのは、落ちていたエロ本らしい。微笑ましいというか、そういうことは昔から変わらないのだなぁ、なんてしみじみと思ってしまう。
そこでふと気付いてしまったのだ。
(明斗は…どないしてるんや…?)
引き取られた小5のときにそういったことに明るかったとは思えない。その後、お金がなくてパソコンなんてものはなく、必要ないからと携帯も持たないまま今に至る。つまり、柔造の知る限り、そういったことにアクセスする機会が明斗にはないのだ。
金造は言いそうに見えて、去年の親族会議の一件以来とてもとても明斗を大事にしているから箱入り娘のように綺麗な話しかしていないだろう。
最近はその一件のこともあってから、やっと明斗は家に慣れてくれたのか、過保護な金造をうっとうしがったり、廉造や弓に構ってやったりと普通の男兄弟らしくなってきている。言葉遣いも素っ気ないものになってきたが、 他人行儀より遥かにマシだった。
柔造はそのなかでも、中級の祓魔師となってから仕事が難しくなった明斗にあれこれ教える立場にあることからも、明斗からは慕われていると思う。
そんな自分だからこそ、しっかり教えるべきは教えなければ、と意気込んだのだった。
***
仕事を終えて明斗が帰宅すると、柔造が穏やかに笑いながら「おかえり」と迎えてくれた。
「ただいま、柔兄」
まだ少しくすぐったいが、こうやって挨拶をするたびに胸が暖かくなる感じがするのだ。明斗は下足を脱いで廊下に上がる。
「風呂出たら俺の部屋来てもらってええか?」
「?分かった」
何か話があるのだろうか。首を傾げながら思い当たる節を探すも特にはない。それなら考えても意味のないことだ、と明斗は考えるのをやめて風呂場へ向かった。
風呂を出ると、まっすぐ柔造の部屋に向かった。浅黄色の着物を着て部屋までやって来ると、気づいたのか柔造が声をかける。
「入ってええで」
「あ、うん」
襖を開けて中に入ると、同じ着物姿で座椅子に胡座をかいていた柔造が手招きする。後ろ手に襖を閉めてそちらへ向かうと、手を引っ張られてその胡座の上に横向きに座らせられた。右側に柔造の逞しい胸板がある状態だ。いったいなぜこの状態になったのか分からずポカンとしてしまう。
「柔兄…?」
「明斗。単刀直入に聞きたいんやけどな」
突然改まって喋りだした柔造に、思わず身構える。そもそもなぜこの姿勢なのかは相変わらず不明だが。
「ちゃんと、性処理はしとるんか」
「……なに?」
「なにて……ナニっちゅうか…自慰や」
「…?」
何を言っているのか分からない。聞いたことのない単語で、祓魔師関係かと記憶をさぐるが、そんな用語はなかった。
「やっぱ知らんか…」
「え、知ってないとだめだった…?」
「だめ、ではないんやけどな。まぁ、教えたるわ。まずはここを立たせる」
すると、柔造は訳知り顔で頷くなり、突然下腹部に手を伸ばしてきた。明斗の着物の合わせ目から手を入れて、下着越しに自身に触れてきたのである。
「ちょっ、どこ触って…!」
「大丈夫やから。エロいこと考えたら自然に大きなるで」
「え、エロいこと…?分かんないって、柔兄、こわい……」
何を言っているのか分からないままで、その上まったく縁がないことを突然言われても混乱するばかり。それで人に触られないようなところを触られて、いったい何がしたいのか分からなかった。
「あー…堪忍な、大丈夫大丈夫」
そんな様子を見て、柔造は苦笑して反対の手で明斗の頭を撫でた。