Middle Age II: a part of the world
−眉毛と髭と百年戦争



14世紀初頭。

ヨーロッパ世界は再び環境が変わり、封建社会が崩壊し近代へ向かおうとしていた。
13世紀のモンゴル帝国の侵略によって、欧州には先進国である東アジアから火砲がもたらされ、剣で戦う騎士たちの没落が始まる。
また、十字軍はアイユーブ朝に代わったマムルーク朝の前に太刀打ちできず、他にももろもろの条件が重なってストップすることになった。イタリアにおける教皇派と皇帝派の戦争もほぼ終結し、ほとんど同じタイミングで欧州からめぼしい戦争がなくなった。
東方にはヤギェヴォ朝ポーランド=リトアニア王国やタタールのくびきを脱したモスクワ大公国が成立したことで、東方植民も終わる。

こうして、ドイツ地域の男子たちは傭兵や修道士の道も閉ざされ、騎士でさえも時代に淘汰されようとしていたため、ドイツ地域は深刻な人手過剰に陥っていた。

土地を継いだ農民たちも、農奴身分の者は反乱を起こすようになった。中世の安定期に西欧がようやく貨幣経済を思い出し、三圃制による余剰農産物の売買も始まったことで、農奴との税や見返りが貨幣で行われるようになっため、農奴の資産構築とそれによる地位の向上が始まったのだ。

そうやって中世の終焉の音が聞こえる中、アルレシアは変わらず緩やかな成長を続け、社会も穏やかに変わっていった。
もともと中央集権的だったアルレシアは、農奴もそう多くなく、商人ばかりの国として安定した社会だった。地方自治を任せていた役人の権限が中央に移り、不正を防ぐ試みが行われ、少しずつ社会構造の変革が行われていた。


隣のイギリスも、農奴反乱など色々と大変だったようで、よく愚痴を言いに来るようになっていた。安定した社会を持ち、最も長生きの国だからだろう。

そのイギリスはフランスと最近急激に仲が悪くなったようで、そのことも愚痴に含まれる。


「それでその上司どうしたと思う?」

「マグナ=カルタ無視したんだろ?」

「あ、あぁそうなんだけどよ…」

「それ13世紀の前半からもう215回目なんだけど、聞くの」

「そうか?」

「最近の話にしろよ、せめて」


呆れるアルレシアに、イギリスは頬を指でかく。


「あぁ、この前な、新しい議会ができたんだ」

「また?イギリスの家はほんとに議会が強いな」

「まぁな。Model Parliament(模範議会)って言って、貴族と聖職者の他に、各州2人の騎士と各市2人の市民で構成されてんだ」

「市民?」

「あぁ。貴族、聖職者、市民。3つの身分の代表による議会だ」

「へぇ。いいな」

「だろ?…って、え、アルレシアが褒めた…?」

「あぁ。どうかしたか?」


イギリスは驚いてアルレシアを見つめた。


「い、いや…珍しいこともあるもんだな」

「いいもんはいいだろ。いいな、それ俺ん家でもやるか」

「…なんか、素直なアルレシア、気持ち悪い」

「喧嘩売ってる?俺強いよ?」

「ちげぇよ」

「てかイギリスより素直だし。心も眉毛も」

「素直な眉毛ってなんだばか!」

「二言目にはばかだもんな、語彙力なんとかしろよ」

「最近お前冷たい…」

「優しくして欲しいんだ…?」


小気味よいテンポの会話のあと、ぐい、とイギリスに近寄り間近から見上げれば、一瞬で顔が赤くなった。


「…?どうした?」

「いいいいいや!?なんでもねぇ!」


その反応が分からず首を傾げると、イギリスは何かを振り払うように急に立ち上がった。

ふと、それを見て感慨が沸く。


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